「何とか退去させられないか」近所からのクレームに、家主も困り果てていた。(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の「家賃滞納」問題。強制執行による立退き当日、賃借人は何を語ったのか。 ※本記事はOAG司法書士法人代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

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    築60年超「今にも崩れそうな長屋」に住む73歳男性

    手ぶらで歩いて外出しては、自転車に乗って帰ってくる賃借人がいました。賃借人の名前は、鮎川健一郎(73歳)さん。身寄りもなく、一人でこの長屋の1軒に住んでいます。

     

    4軒長屋の建物は、築60年以上。設備も古いため、鮎川さん以外の3軒は、新しい部屋へと転居していきました。不動産は生き物とはよく言ったもので、4軒中1軒しか使われていないせいか築年以上に建物は傷み、今にも崩れ落ちそうな勢いでした。

     

    鮎川さんが乗って帰ってきた自転車は、長屋と隣の家とのフェンスの隙間に次々と置かれていきます。狭い敷地に建っている長屋なので、置けるスペースは限られていて、あっという間に隙間がなくなるほど自転車で埋め尽くされてしまいます。そうすると次からは自転車の2段重ね。自転車の上に、自転車が。さながら自転車のテトリスのようでした。

     

    そもそもこの自転車、鮎川さんはなぜ乗って帰ってくるのでしょうか。無造作に積まれて使われていない状況から推測すると、「欲しかったから」「乗りたいから」という理由ではなさそうです。

     

    盗難届が出された自転車を捜すため、警察の方は何度もこの自転車館を確認しに来られました。重なりあった中から探し出すのは至難の業ですが、それでも何台かは埋もれていたのです。ただその自転車が、誰かが盗んでその場に置いたのか、それとも鮎川さん自身が盗んだのか、決定的証拠もないため逮捕はされず警察も様子を見るということでした。

     

    敷地の反対側は細い路地になっていて、通る人々から「積み上げられた自転車のせいで見通しが悪い」などの苦情まで来るようにもなりました。

     

    警察がしょっちゅう自転車を確認しに来る、近隣からもクレームが来るでは、家主もたまったものじゃありません。何とか退去させられないかという相談を受けました。

     

    次ページ母と二人暮らしだった鮎川さん。家賃の滞納額は…

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      太田垣 章子

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