退職金で叶えた人生最高の思い出
高橋正夫さん(仮名/65歳)は、大手メーカーで営業部長を勤めたあと、定年退職を迎えました。妻の恵子さんとは結婚して40年近く。夫婦そろって旅行好きで、友人たちからも「年をとっても仲のいい夫婦」として知られています。
子どもたちが独立したあと、二人には長年温めてきた夢がありました。「いつか仕事を辞めたら、クルーズ船で世界一周をしてみたい」。それは、忙しい会社員生活のなかでは叶わなかった、憧れの旅でした。
住宅ローンは完済済み。退職金3,000万円が入り、金融資産も2,000万円以上あったため、軍資金は十分です。
「いましかない」
そう考えた二人は、思い切って約2,000万円を支払い、約3ヵ月におよぶ世界一周クルーズへと出発したのです。船上では毎晩のように豪華なディナーを楽しみ、各国の寄港地では現地の文化や景色に触れました。これまで訪れたことのない国々で過ごした時間は、まさに人生最高の思い出となりました。
「本当に行ってよかったな」
帰国の途、夫婦はこの人生で一度切りの経験を噛みしめていました。
ところが幸福感に包まれて自宅へ戻った二人を待っていたのは、夢見心地の気分を一瞬で吹き飛ばす「現実」だったのです。
帰国後、届いた“100万円超”の請求書
自宅に溜まっていた郵便物を整理していた高橋さんは、一通の封筒に目を留めました。中身を開いた瞬間、夫婦は思わず顔を見合わせます。
封筒の差出人は市役所でした。高橋さんは退職後、それまで加入していた会社の健康保険を抜け、国民健康保険へ加入する手続きを済ませていました。窓口では具体的な保険料について詳しい説明はなかったものの、本人も「まあ、仕事を辞めた身だし、そこまで高くはないだろう」と思っていたのです。
ところが届いた通知書には、年間100万円を超える国民健康保険料が記載されていました。
「えっ……こんなに高いの?」
高橋さんは思わず声を上げました。翌日、市役所へ電話して確認すると、原因はすぐにわかりました。


