最近、タワーマンションの材料や工法が斬新すぎて、普通のマンションの修繕・管理のメソッドが当てはまらないことが問題になっています。作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より、タワーマンションの問題点について一部抜粋・編集し、解説します。

マンションの動脈硬化?…恐ろしすぎる症状

2年にわたる外壁修繕は無事に終了しました。多元改修は、厄介な水回り、給排水管を視野に入れた次の段階に移ります。ゲストルームの大きなジャグジーは水漏れが生じていました。ジャグジーの稼働率は、15年間で99パーセント。住民の予約は引きも切らず、フル稼働した反動が出ているのです。漏水の報告も届いています。

 

排水管のメンテナンスは「やってみなければわからない」部分もあります。橋本氏のタワーマンションは、柱・梁・床の構造軀体と、住戸の内装や設備を分離した「スケルトン・インフィル(SI)」と呼ばれる工法でつくられています。SIマンションは、軀体を長持ちさせて内装や間取りは状況に応じて変化させられます。200年仕様の根幹です。

 

SIでは給排水管やガス管を縦に通すパイプシャフトが共用部分に設けられていますが、低層の集会室に差しかかると水平にちかい勾配の配管もみられます。この部分の排水が滞ると腐食が始まり、動脈硬化のような現象が起きます。排水管は見えない老化が進んでおり、専門的な調査が必要なのです。

 

20億円規模のヒーツ更新も避けて通れません。高速エレベーター、インターネットシステム、庭園の植栽の管理……と、次々に多元的な改修が迫ってきます。橋本氏は、こう力説しました。

 

「超高層マンションの維持管理は特殊な世界です。概念を変えなくてはいけない。建築と、複雑な設備、両方を掌握できる専門家はどこを探してもいません。本当は“タワーマンション・マネージャー”と胸を張って言える人が求められているけど、いないんです。

 

1棟ずつ、全然、状況が違うので、維持管理の安易な標準化は危険ですが、それでも知識を集めて、修繕・改修のガイドラインを早くつくったほうがいい。最低限、建物と設備の修繕履歴が世代を超えて伝わるシステムが必要です。

 

そのためには、超高層を建てた元施工の協力が欠かせません。元施工は、どこにどんな設備が入り、配管がどう通っているか、知っているのですから。元施工の役割は重要です」

 

国交省は、タワーマンションの維持管理ガイドラインづくりを始めてほしいものです。それは、容積率を緩和し、補助金を投入して「都心回帰」の旗を振ってきた行政の責務でしょう。

 

 

山岡 淳一郎

ノンフィクション作家

東京富士大学客員教授

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

山岡 淳一郎

岩波書店

建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。さまざまな課題がとりまくなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録