武蔵小杉、東京湾岸の超高層化とインフラ整備の遅れ
神奈川県川崎市中原区、3つの「武蔵小杉駅」の周りにはわずか10年余りで十数棟の超高層マンションが林立しました。JR横須賀線と湘南新宿ライン、私鉄の東急東横線、JR南武線が、それぞれ武蔵小杉の名で駅舎を構えており、大型ショッピングモールやホテルも建ち並び、子育て世代を中心に人口が急増しています。
それにつれて、通勤、通学の時間帯に人の波が駅に押し寄せ、すさまじい混雑が生じました。鉄道インフラが追いつかないのです。朝7時半、JR横須賀線の新南改札から入場待ちの列が路上までのびていました。
横須賀線は1つのホームを上下線が使っており、人と人がすれ違いざまに転落しそうな怖さを感じます。品川まで10分で行けるはずが40分かかりました。
JR東日本は、横須賀線のホームを増設し、新しい改札口を設けると発表しています。2023年には新ホームが完成するのですが、周辺では今後も超高層マンションの建設が予定されており、電車の増発が難しいなか、どの程度、混雑が緩和されるか見通せません。
もともと武蔵小杉駅は、東急東横線とJR南武線の2つでした。駅の東側は、不二サッシや東京機械製作所の大工場と、ガラスや印刷の町工場がひしめく工業地帯が広がっていました。
1990年代、工場移転が現実味を帯びると跡地利用の再開発が注目されます。再開発が加速したのは2003年。きっかけは鉄道でした。川崎市とJR東日本が横須賀線にも武蔵小杉駅を新しく開く協定を結び(2010年完成)、超高層開発のアクセルを踏んだのです。
横須賀線に新駅ができれば、品川や大手町、都心の勤務地と、横浜、鎌倉、湘南が1本でつながります。中間点の武蔵小杉に超高層マンションを建てれば、周辺の需要を吸収し、人気を博すのは間違いない。2007年ごろから続々とタワーマンションが建ちました。
ディベロッパーのマーケティングは図に当たりました。それにひきかえ、自治体の人口見通しは大幅に外れます。川崎市は、高層マンションは富裕層が購入し、30歳前後の子育て世代は少ない、と予想していました。
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