最近、タワーマンションの材料や工法が斬新すぎて、普通のマンションの修繕・管理のメソッドが当てはまらないことが問題になっています。作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より、タワーマンションの問題点について一部抜粋・編集し、解説します。

不安要素を吹き飛ばした管理組合と橋本氏の決断

そこで管理組合と橋本氏は、発想を転換します。建築コンサルタントと手を切り、「元施工を大規模修繕工事の元請けに据える」ことにこだわったのです。

 

元施工とは、タワーマンションを建設した大手ゼネコンを指します。ゼロから建てた大手ゼネコンは建物のことをよく知っており、責任もあるのだから修繕工事の元請けに入ってもらおう、と考えたのです。

 

「住民が元施工の大手ゼネコンの参加を望みました。ここは「200年仕様」を基本構想に建てられています。鉄筋にコンクリートをかぶせた厚さ(かぶり厚)も、一般のRC造は4センチですが、6センチにしてあります。

 

2センチの違いだけれど、200年、大丈夫だと。巨大地震でも倒れない構造設計がされています。200年、建物を維持していくには元施工の協力が不可欠です。元施工が外れたら、責任の所在が不明確になる。

 

たしかに元施工を入れたら間接経費がかさむので、工事費は改修専門の施工会社より2割高くなります。それでも、200年後まで元施工に面倒をみてもらうべきだ、と住民の意見は一致しました」

 

とはいえ、大手ゼネコンにとってマンションは建てておしまい、手離れのいい案件です。利益の薄い修繕には興味がありません。スーパーゼネコンでマンション改修の施工子会社を持つのは清水建設ぐらいです。ここの元施工は別の会社でした。

 

東京五輪関連の施設建設に追われる元施工がはたして振り向いてくれるのか、確信はありませんでした。

 

住民は手を尽くして元施工を説得します。最終的に「200年仕様」の責任の重さで大手ゼネコンは重い腰を上げ、修繕の元請けを引き受けました。コンサルタントを外し、大手ゼネコンの「責任施工」で外壁の修繕を行う体制が敷かれたのです。

 

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建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。さまざまな課題がとりまくなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する…

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