最近、タワーマンションの材料や工法が斬新すぎて、普通のマンションの修繕・管理のメソッドが当てはまらないことが問題になっています。作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より、タワーマンションの問題点について一部抜粋・編集し、解説します。

「タワマンの設備変更」15年で7億円以上浮く?

橋本氏は、工事費用を勘案してさまざまな修繕、改修工事に優先順位をつけ、多元的に取り組んでいました。橋本氏が語ります。

 

「ご多聞にもれず、うちも修繕積立金が足りませんでした。住戸1平米当たり130円ぐらいで設定されていました。外壁の大規模修繕が決まった段階で、これを国交省の標準値にちかい206円に上げました。80平米の住戸で年間20万円、マンション全体で2億円の積立金です。

 

10年蓄えたら20億円。それでもヒーツの更新で飛ぶ金額です。やはりランニングコストを抑えなくちゃいけません。それで共用部分の照明をLEDに変え、空調のエアコンも省エネタイプに交換しました。外壁よりも先にやりました。年間の電気代は、1億1000万円から6000万円に下がります。15年間で7億円以上浮くだろうと見込んでいます」

 

太陽光発電も検討したのですが、設備を置く場所がなく、断念したそうです。

 

外壁の大規模修繕については、当初、理事会の意見が割れ、実施時期さえ決まっていませんでした。マンションは10年間の瑕疵担保が保証されていました。管理組合は、2012年に改修専門の建築コンサルタントを入れて、50階建て2棟の外壁タイルの浮きや、地下の防水を調査します。不具合があれば事業主の不動産会社が費用を負担して直しました。

 

調査を通して軀体の傷み具合が把握でき、各戸のベランダ防水の必要性が浮上します。住民の間に外壁修繕への意識が高まり、翌2013年に修繕委員会が立ち上がり、橋本氏が理事に就いて修繕工事のプランが作成されたのです。

 

外壁の修繕工事は、基本設計→実施設計→施工業者の選定→着工→竣工のプロセスをたどります。一般のマンションの工期は半年、せいぜい1年程度ですが、超高層の工事面積はとてつもなく広く、2年、3年かかります。

 

膨大な工事の質を高く保つ鍵は、元請けと下請けの施工体制です。全国的に超高層マンションの大規模修繕はまだ始まったばかりです。コンサルタントの「設計監理」には不安な要素が多々ありました。

 

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生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

山岡 淳一郎

岩波書店

建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。さまざまな課題がとりまくなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する…

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