(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいとして、有料老人ホームを選ぶケースは珍しくありません。見守り体制や生活支援の充実は大きな魅力ですが、費用構造やサービス内容は施設ごとに異なり、入居後に想定外の負担が生じることもあります。安心を求めた選択が、家計や暮らし方の見直しを迫る契機となることもあります。

「資産を使い切ろう」高級老人ホームに入居した女性

井上さん(仮名・73歳)は、夫を亡くした後、一人暮らしを続けてきました。

 

年金は月14万円ほど。加えて、夫の退職金やこれまでの貯蓄を合わせて、約3,000万円の資産がありました。

 

「子どもたちに残すより、自分で使い切ろうと思ったんです」

 

そう考えた井上さんは、70歳を過ぎた頃から住まいの見直しを検討し始めました。きっかけは、自宅での転倒でした。大きなけがには至らなかったものの、「このまま一人で暮らし続けるのは不安だ」と感じたといいます。

 

複数の施設を見学した中で選んだのは、いわゆる高級老人ホームと呼ばれる有料老人ホームでした。入居一時金は約2,000万円。月額費用は食費や管理費を含めて20万円台後半です。

 

「ここなら安心して暮らせると思いました」

 

施設には24時間の見守り体制があり、食事や清掃も提供されます。イベントや交流の機会もあり、「老後を楽しむ」というコンセプトに魅力を感じたといいます。

 

入居当初の生活は、まさに理想的なものでした。毎日の食事は温かく、掃除の手間もない。共用スペースで他の入居者と会話を楽しむ時間もありました。

 

「一人暮らしのときとは全然違いました。安心感がありました」

 

しかし、その生活は徐々に別の側面を見せ始めます。

 

入居から半年ほど経った頃、井上さんは費用の内訳に違和感を覚えるようになりました。基本料金とは別に、医療対応費や介助費、特別食の追加料金などが発生していたのです。

 

「最初に聞いていた金額より増えている気がしました」

 

契約時の説明には確かに記載がありましたが、当時は深く理解していなかったといいます。

 

「全部込みだと思っていたんです」

 

特に影響が大きかったのは、体調の変化に伴う介助費でした。軽度のサポートであれば基本料金内で対応されますが、一定以上の介助が必要になると、追加費用が発生する仕組みでした。

 

「少し手伝ってもらうだけでも、積み重なると大きな金額になっていました」

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月約14.8万円です。それと比べると、施設での生活費は大きく上回る水準でした。

 

さらに、井上さんは次第に人間関係にも違和感を覚えるようになりました。

 

「最初は楽しかったんですが、だんだん気を使うことが増えて」

 

施設内の交流は自由である一方、距離感の難しさもありました。毎日のように顔を合わせる環境は、必ずしも心地よいものとは限りませんでした。

 

 \6月16日(火)開催/
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