建物関係の技術が発展し、木造建築でも50年~100年住むことが可能になりつつある今、税金面での工夫やローンの期間延長などさまざまなテクニックが登場し始めました。これらのテクニックを税理士で自身も賃貸住宅を経営している川口豊人氏が解説します。

年間で数百万円分経費として計算できる

建物本体と設備の価格の割合は、私の経験ではきちんと分ければ7対3で申告するのが普通です。さらに、しっかりとした根拠さえあれば、それ以上高い設備の割合で申告することも不可能ではありません。

 

建物本体7000万円は、47年で償却するので、年間の経費は約149万円になります。それに対して、附属設備は償却期間が建物本体より短く15年程度です。この場合には、3000万円を15年間で償却ですから年間の経費は200万円になります。建物本体の約149万円と合わせると年間約349万円です。1億円を47年で償却するときの約213万円に比べると約136万円も多く計上できることが分かります。

 

このように、設備の費用を多く申告することによって、短期間で効率的に償却できるので、経費をたくさん計上できます。その分、不動産所得税を節税し、キャッシュフローが良くなり、賃貸経営の資金繰りに大きく貢献します。

 

仮に年間1000万円の賃料収入などがあったとして、各種の手数料やリフォーム費用などの経費が200万円、減価償却が400万円だとすれば、単純計算で利益は400万円です。しかし、減価償却の400万円は帳簿上の支出に過ぎず、実際に出ていくお金ではありません。貯めたキャッシュでローンの繰上返済などをどんどん進めたり、別の物件への再投資に回したりすることができますし、また10年後、15年後に必要になる大規模なリフォーム費用のために蓄えておくことも可能でしょう。

 

念のため補足しておきますが、建物本体と設備の価格の割合は、むやみに操作できるものではありません。実態がともなわないのに設備が5割などと申告すると、税務署から指摘が入ることになりますので注意してください。税の専門家に相談しましょう。

 

賃貸住宅経営では、この減価償却の仕組みから、経営を始めた新築時ほどキャッシュフローが良くなります。ただし、せっかく貯めたキャッシュを生活費や娯楽などに使ってしまっては意味がありません。当初の潤沢な資金を有効に活用して事業に活かすのが成功への条件のひとつといっていいでしょう。

 

以上のように、賃貸住宅の黒字化を図るためには、まずは金融機関と交渉して条件変更を行うのが最初のステップであり、減価償却などを活用して資金繰りを良くすることが重要です。そこで資金的な余裕をつくり出して、その資金を入居者確保、賃料確保のためのリフォーム資金などに充てることで、賃貸住宅経営の黒字化が実現され、経営が安定します。

 

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川口 豊人

幻冬舎メディアコンサルティング

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