建物関係の技術が発展し、木造建築でも50年~100年住むことが可能になりつつある今、税金面での工夫やローンの期間延長などさまざまなテクニックが登場し始めました。これらのテクニックを税理士で自身も賃貸住宅を経営している川口豊人氏が解説します。

減価償却費を計上するほど、手元に現金が残る

賃貸住宅経営の資金繰りを良くするためには、減価償却の仕組みを理解して、節税に活用することも効果的です。

 

減価償却は、長年にわたって業務に使用する資産への支出を、何年かに分けて少しずつ費用化していくことです。減価償却の対象となる資産は不動産やパソコンなどさまざまありますが、それぞれ何年に分けて費用計上するかは、法定耐用年数として定められています。図表1にあるように、新築時の賃貸住宅の法定耐用年数は木造で22年、鉄筋コンクリート造で47年です。

 

鉄筋コンクリート造のマンションを新築した場合であれば、47年にわたって建築費を償却します。仮に建物価格が1億円だとしたら「1億円÷47年」で、年間の経費は約213万円。実際にキャッシュアウトしていなくても、毎年の帳簿上は約213万円を経費計上して収入から差し引くことができるわけです。

 

その分、利益が圧縮されて所得にかかる税金が少なくなります。この仕組みは、厳密には税金を次期へ繰り延べているに過ぎないので、長期で見れば税金が減ったわけではないのですが、ここでは簡単な理解にとどめておきましょう。

 

要するに、減価償却費を多く計上できれば、その年の税金の支払いが少なくてすみ、手元に現金が残るわけですから資金繰りには有利になるということです。後のリフォームや、ローンの繰上返済のことを考えるならば、早い段階でキャッシュをより多く蓄えておくに越したことはありません。

 

そこで、減価償却費を早めに多く計上する手はないか、と考えるわけですが、実は私が知る限りほとんどのオーナーが活用できていない手法があります。それが設備の減価償却です。

 

たとえばマンションの建物価格が1億円だったとします(土地は減価償却できないので土地代は別に考えてください)。建物価格は、建物本体とエレベーターや給排水関係などの建物附属設備に分けられるのですが、その割合をどう申告するかが資金繰りのポイントです。なぜなら、設備のほうが耐用年数が短く、短期間で多額を費用計上できるからです。

 

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川口 豊人

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