減価償却資産の耐用年数とは?資産の種類ごとの耐用年数と新品・中古の違い【税理士が解説】

減価償却資産の耐用年数とは?資産の種類ごとの耐用年数と新品・中古の違い【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

減価償却の耐用年数とは、資産(減価償却資産)を使用できる期間として税法上定められているものをさします。事業用固定資産のうち購入金額が10万円超のものは減価償却の対象になります。減価償却の耐用年数は資産の種類や用途ごとに細かく定められており、また、新品か中古かによっても扱いが異なります。本記事では、具体的な資産ごとの減価償却の耐用年数や扱い方等について、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏がイメージしやすいよう解説します。

目次
1. 減価償却とは
1.1. 減価償却のしくみ
1.2. 減価償却の計算方法
2. 減価償却における耐用年数とは
2.1. 耐用年数は「耐久性」とは無関係
2.2. 耐用年数の確認方法
2.3. 耐用年数と節税
3. 資産の種類ごとの耐用年数
3.1. 建物
3.2. 建物附属設備
3.3. 構築物
3.4. 生物
3.5. 車両・運搬具
3.6. 工具
3.7. 器具・備品
3.8. 機械・装置
4. 中古資産の耐用年数
4.1. 法定耐用年数を経過した資産
4.2. 法定耐用年数の一部しか経過していない資産
まとめ

1. 減価償却とは

減価償却とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

1.1. 減価償却のしくみ

減価償却とは、一定以上の価値があるとされる資産に対して、法律で定められた耐用年数に応じて「1年ごと」に「経費」に計上していくという会計処理の考え方です。

 

対象になる資産は「固定資産」とよばれ、車や機械などといった「有形固定資産」と、ソフトウェアなどの「無形固定資産」の2種類があります。

 

減価償却の対象となるのは、あらかじめ定められた対象群の中で、購入金額が10万円を超えるものを指します。

 

また、減価償却の対象となる資産は、「購入後、時間経過とともに価値が減少していくと考えられるもの」です。そのため、たとえば不動産購入を行った場合でも、徐々に経年劣化していく「建物部分」は減価償却の対象ですが、経年劣化しない「土地部分」は減価償却の対象ではありません。

 

建物の減価償却については、詳しくは「建物の減価償却|耐用年数、計算方法等の基礎知識と注意点」をご覧ください。

 

1.2. 減価償却の計算方法

減価償却で各事業年度に計上できる経費の額は、自由に按分できるものではありません。

 

減価償却にかける期間は「耐用年数」として定められており、毎年の計上する金額は「定率法」か「定額法」と呼ばれる決められた方法に則って計算しなければなりません。

 

どちらの方法においても、経費化できる総額はまったく同じです。あくまでも、1年ごとの減価償却できる額が異なるだけです。

 

「定率法」「定額法」の内容は、それぞれ、以下の通りです。

 

【定率法】

毎年の未償却残高に対して、「常に一定割合」の減価償却率を掛け合わせて減価償却額を算出する方法。初年度がもっとも減価償却額が大きくなり、年が進むにつれ償却額が小さくなっていく特徴がある。

 

定率法による計算結果が「償却保証額」に満たなくなった場合、以降は毎年同額の償却額に変更する。

 

【定額法】

取得価額に対して「定額法の償却率」をかけたものを減価償却額として「常に一定額」を償却していく方法。基本的に、毎年同じ額を償却する。ただし、減価償却の最終年には端数調整が行われる。

 

いずれも、期の途中で購入した場合は「月割り」で減価償却費を計上します。

 

基本的に、いずれか好きなほうを選ぶことができます。一般的には、早期に大きな減価償却費を計上できる「定率法」を選ばれることが多くなっています。

 

ただし、資産の種類や条件によっては、「定額法」しか選択できない場合もあるため、あらかじめ国税庁のHP等で確認しておくことが重要です。

2. 減価償却における耐用年数とは

減価償却における耐用年数とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

2.1. 耐用年数は「耐久性」とは無関係

減価償却で用いる耐用年数とは、「一般的な維持補修を行った場合に、本来の用途として通常期待できるだけの効果を上げることができる年数」として法令により定められた年数を指します。

 

あくまで減価償却する際に用いるための指標にすぎないので、耐用年数を超えたものを使い続けたからといって法律違反にはなりません。実際に、耐用年数を超えて使い続けることができる資産はたくさんあります。

 

耐用年数と間違われやすい言葉が、「耐久年数」です。

 

耐用年数は、国が定めたものです。これに対し、「耐久年数」は、メーカーなどが独自テストによって公表している指標です。何年くらいまでならこの機械を使っても問題ない、といった目安の数字であり、耐用年数と似た意味で使われることが多いですが、使用する場面が異なります。

 

耐久年数は、製品の買い替えタイミングなどを計る際に参考にする指標ですが、法的な拘束力はありません。減価償却の計算に使用する指標は、耐用年数だけなので、間違えないようにしてください。

 

2.2. 耐用年数の確認方法

耐用年数は、対象となる資産の種類によって異なるほか、構造や用途によっても違いがあります。

 

2.2.1.「構造」による違い

たとえば、同じ「建物」であっても、「鉄筋コンクリート造」と「木造」では、同じ用途であっても、異なる耐用年数が設定されています。鉄筋コンクリート造の方が資産価値が長く残るとされているため、他が同じ条件であっても、木造に比べて長い耐用年数が設定されているのです。これが構造による違いです。

 

2.2.2.「用途」による違い

また、同じ「車両」であっても、タクシー等の運送事業用と一般の社用車では、耐用年数が異なります。運送事業などに使用する方が、利用頻度が高い分資産価値の減少が早いとみなされているため、短い耐用年数が設定されています。これが用途による違いです。

 

耐用年数の詳細は、国税庁ホームページに掲載されている「主な減価償却資産の耐用年数表」等で確認することができます。

 

2.3. 耐用年数と節税

その年度の「節税」すなわち税負担の軽減効果も期待して固定資産を購入する場合には、耐用年数が大きく影響してきます。

 

先述の通り、耐用年数や計算方法が違っても、最終的に減価償却する総額は変わりません。しかし、購入した年度にできる限り多くの減価償却費を計上したい場合は、耐用年数が短いほうが有利です。

 

たとえば、仮に、500万円でなんらかの固定資産を購入するとなった場合、耐用年数が2年で「定額法」を用いれば、購入年度におよそ半額(約250万円)を減価償却費として計上できることになります。

 

これに対し、購入した固定資産の耐用年数が10年だった場合、同じ「定額法」によれば購入年度におよそ10分の1(約50万円)ほどしか減価償却費に計上できなくなってしまいます。

 

なお、実際の減価償却は、様々な条件を加味して計算する必要があるため、上記はあくまでイメージとお考え下さい。

 

このように、固定資産の購入に合わせて、当期の税負担軽減効果も期待している場合は、耐用年数が短いほど、1年あたりの税負担軽減効果が大きくなることを押さえておいてください。

3. 資産の種類ごとの耐用年数

資産の種類ごとの耐用年数
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

以上を踏まえ、資産の種類ごとの耐用年数について解説します。

 

資産ごとの耐用年数をすべて記憶するのは無理であり、また、その必要もありません。資産ごとの大まかな分類基準の考え方・イメージを理解すれば十分です。

 

国税庁ホームページ「主な減価償却資産の耐用年数表」を参照しながらご覧ください。

 

3.1. 建物

建物の耐用年数を決める構造には、主に次のようなものがあります。

 

  • 木造・合成樹脂造のもの
  • 木骨モルタル造のもの
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
  • れんが造・石造・ブロック造のもの
  • 金属造のもの

 

これに用途を組み合わせることで、耐用年数の判断ができます。用途には、主に次のようなものがあります。

 

  • 事務所用のもの
  • 店舗用・住宅用のもの
  • 飲食店用のもの
  • 旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの
  • 公衆浴場用のもの
  • 工場用・倉庫用のもの(一般)

 

たとえば、同じ事務所用であっても、鉄筋コンクリート造であれば耐用年数50年、木造であれば耐用年数24年、といったぐあいに、それぞれ異なる耐用年数が定められています。

 

3.2. 建物附属設備

建物附属設備は、建物に付随する設備の中で、簡単には建物と切り離すことができないものを指します。わかりやすい例でいえば、「昇降機設備」すなわちエレベーター等が挙げられます。エレベーターは耐用年数17年と定められており、用途等による違いは設けられていません。

 

また、給排水設備やガス設備などといったインフラ関係の設備も、建物附属設備に含まれます。

 

少しわかりづらいのが、エアコン等の冷暖房設備等の扱いです。型によって「建物附属設備」か「器具及び備品」のいずれかに分けられます。最終的に減価償却できる額は変わりませんが、耐用年数が大きく異なるので、注意が必要です。イメージは以下の通りです。

 

【「建物附属設備」と扱われる冷暖房設備】

  • 「ビルドイン型」「ダクト型」等、建物とほぼ一体とみなされるもの
  • 耐用年数は15年または13年

 

【「器具及び備品」と扱われる冷暖房設備】

  • 「天井埋め込み型」「壁掛け型」「床置き型」「天吊り型」等、一般家庭でも用いられるタイプ
  • 耐用年数は6年

 

3.3. 構築物

構築物は、かなり規模の大きいもののみが該当します。減価償却で扱う機会はめったにないと考えて結構です。具体的には、線路や発電設備、野球場やプールなどの競技場施設、トンネル、橋などが該当します。

 

3.4. 生物

農業や畜産業に携わる場合、生物も固定資産として減価償却の対象になります。動物についてはたとえば「繁殖用の乳用牛」が耐用年数4年、「豚」が耐用年数3年などと設定されています。

 

植物については「かんきつ樹(温州みかん)」が耐用年数28年、「なし樹」が26年などと設定されています。

 

3.5. 車両・運搬具

車両・運搬具は、電車のような鉄道用又は軌道用車両の他に、消防車・救急車といった特殊自動車、その他に自動車や自動二輪(バイク)、自転車等をさします。

 

自動車は、まず用途で分けられます。「運送事業用、貸自動車業用又は自動車教習所用の車両」は宅急便やタクシー、自動車教習所で使われる場合をさします。

 

たとえば、最近見かける機会が多くなったAmazonの配達を行っている軽自動車の場合、「運送事業用」で「小型車(貨物自動車にあっては積載量が2トン以下、その他のものにあっては総排気量が2リットル以下のものをいう。)」に該当するので、耐用年数が3年であると判断できます。

 

なお、一般的な社用車の場合、一般用の自動車のなかで「その他のもの」に該当するため、耐用年数は6年と設定されています。

 

3.6. 工具

工具は専門的なものが多くなります。測定工具や検査工具、取付工具などのほか、金属加工用の金型などが該当します。耐用年数の多くは、5年以内に設定されています。

 

3.7. 器具・備品

器具・備品は、もっとも対象になるものの種類が多い固定資産です。主に次のようなものがあります。

 

  1. 家具、電気機器、ガス機器及び家庭製品
  2. 事務機器及び通信機器
  3. 時計、試験機器及び測定機器
  4. 光学機器及び写真制作機器
  5. 看板及び広告器具
  6. 容器及び金庫
  7. 理容又は美容機器
  8. 医療機器
  9. 娯楽・スポーツ器具

 

業務用のデスクチェアや、応接セット、室内装飾品、冷蔵庫等は「1. 家具、電気機器、ガス機器及び家庭製品」に含まれます。金属製の事務用品の法定耐用年数が15年で、それ以外は5~10年に設定されているものが目立ちます。

 

業務用のパソコンなどは「2. 事務機器及び通信機器」に含まれ、法定耐用年数は4年と設定されています。

 

3.8. 機械・装置

機械・装置は、業界ごとによって大きく分けられています。食料品製造業用設備であれば耐用年数10年、パルプ・紙・紙加工品製造業用設備であれば12年などとなっています。

4. 中古資産の耐用年数

中古資産の耐用年数
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ここまで解説してきた減価償却の耐用年数は、新品を前提に規定されています。これに対し、中古資産の場合は、特例的に短い耐用年数が認められています。

 

中古資産は既に一定期間使用されているため、新品よりも耐用年数が短くなっているということは理解しやすいと思います。問題は、その算出方法です。

 

本来は、中古資産を入手した際に、その固定資産があとどのくらい使用できるのかを合理的に見積もった「利用可能年数」を耐用年数とします。しかし、実際のところ、利用可能年数を正しく見極めることは困難です。したがって、「簡便法」という計算方法が認められています。

 

簡便法では、法定耐用年数の全部を経過している場合と、法定耐用年数の一部しか経過していない場合とで計算方法が異なります。以下、それぞれに分けて紹介します。

 

4.1. 法定耐用年数を経過した資産

すでに法定耐用年数の全てを経過している場合、中古資産の耐用年数は、法定耐用年数の20%で計算します。

 

【計算式】中古資産の耐用年数=法定耐用年数×20%

 ※ 1年未満の月数は切り捨て

 ※ 計算結果が2年未満の場合は2年とする

 

【計算例】中古普通自動車を社用車として購入した場合

  • 法定耐用年数:6年
  • 購入時:10年経過

 

耐用年数=6年×20%=1.2年⇒2年

※月数切り捨てにより1年となるが、2年未満なので耐用年数「2年」とする

 

4.2. 法定耐用年数の一部しか経過していない資産

法定耐用年数の一部しか経過していない場合の耐用年数は、法定耐用年数から経過年数を引いたものに、中古資産購入までの経過期間の20%を足して算出します。

 

【計算式】中古資産の耐用年数=(法定耐用年数–経過期間)+(経過期間×20%)

  ※ 経過期間に1年未満がある場合は月数に直して計算

  ※ 最終計算結果の1年未満の月数は切り捨て

  ※ 計算結果が2年に満たない場合は2年とする

 

【計算例】中古普通自動車を社用車として購入

  • 法定耐用年数:6年
  • 購入時:2年6ヵ月経過

 

耐用年数=(6年–2年6ヵ月)+(2年6ヵ月×20%)

=4年6ヵ月+3.6ヵ月=4年9.6ヵ月⇒4年

※4年9.6ヵ月で月数を切り捨てるため、耐用年数「4年」となる

まとめ

まとめ
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減価償却の計算において、固定資産の耐用年数は資産の種類、構造、用途等に応じて多岐にわたります。しかし、こと新品の資産に限っていえば、基本的な原理・考え方の方向性を理解してしまえば、実は計算はそれほど難しくありません。

 

これに対し、中古資産を扱う場合は、計算式も複雑化し、理解できていたとしても時間を要するケースが多くなります。そういった場合は、ぜひ税理士等の専門家に相談してみてください。

 

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