将来の不動産価格は誰にもわからない
しかし、ビギナーにとっては、その知識はあっても、実際どの程度の利回りを想定して、不動産を購入し、借り入れをすればいいのか見当をつけることは難しいだろう。沢さんは、これまでの自身の経験から、購入するときの実質利回りの目安は「金利+6%」以上を確保することを原則にしているという。目標とする実質利回りの数字が決まれば、逆算して、表面利回りがどのくらいの不動産を購入するのがいいのかがわかる。
例えば、沢さんによると、金利2%、管理費5%、空室率20%とした場合、表面利回りを算出する計算式は、
表面利回り=実質利回り(借入金金利2%+6%)÷{1-(空室率20%+管理費5%)}=8%÷(1-0.25)=10.66%
となる。すなわち、表面利回り10.66%以上の物件が購入を検討すべき物件となるというわけだ。
もう一つの「不動産価格の落とし穴」とは、不動産価格の将来は誰にもわからないということだと、沢さんは言う。つまり、できるだけ価値の下がらない不動産を購入することが不動産投資を成功させるということだが、実際、どの程度の価値が残っていれば成功といえるのだろうか。
沢さんは自身の経験から、10年後に「市場価値が購入時の80%、賃貸収入が購入時の90%」の基準を満たしていれば、投資する価値のある不動産として検討対象にするという。実際に、実質利回り「金利+6%」と「市場価値が購入時の80%」でシミュレーションしてみよう。
前提条件は、物件価格1億円、自己資金10%、家賃800万円、金利2%で20年元利均等返済、固定資産税・火災保険は家賃8%、空室率・募集経費・管理費等は家賃15%、修繕費は家賃3%、所得税は20%とする。
この投資は、10年間でどのような結果となったのか。
キャッシュフローの累計額(回収額)は3324万円、不動産価格からキャッシュフローの累計額を差し引いた不足分(未回収額)が6676万円となる。10年後の物件価格を下限80%と設定しているので、8000万円で売れたとする。8000万円から未回収額を差し引けば、1324万円で、自己資金1000万円が10年後に1324万円になったということになる。