どんなに潤沢な老後資金を蓄えていても、何が起こるかわからないのが人生。65歳の本山さん夫婦の事例をもとに、老後起こりうる“思わぬリスク”と、最悪の事態を回避するための対策をみていきましょう。神戸・辻本FP合同会社代表の辻本剛士氏が解説します。
愛だけではどうにもならないんですね…〈年金月23万円・貯金3,000万円〉子のいない65歳“晩婚カップル”が「老後破産」に怯えるワケ【CFPの助言】
48歳で結婚…年金で悠々自適に暮らす晩婚カップル
本山大介さん(仮名・65歳)と同い年の妻・美奈子さん(仮名・65歳)は、駅から徒歩10分の住宅街にある一戸建てで2人暮らしをしています。
大介さんは長年中堅繊維メーカーの営業部に勤めており、美奈子さんは不動産会社の事務員として働いていましたが、大介さんとの結婚を機に専業主婦になりました。
2人が結ばれたのは、48歳のときです。いわゆる晩婚夫婦で、子どもはおらず、2人だけの生活を存分に楽しんできました。休日はお気に入りのバーでお酒を嗜んだり旅行に出かけたりすることが夫婦の楽しみで、周囲からも「仲のいい夫婦」として知られていました。
50歳を機に、2人は思い切ってマイホームを購入しました。買ったのは5,000万円の一戸建てです。月々の返済額は約15万6,000円と決して安くはありませんでしたが、子どもの養育費などがかからないため、そこまで負担には感じていませんでした。
65歳になり「年金生活」がスタート
そして時は経ち、夫婦は65歳に。定年を迎えた2人の年金生活が始まりました。年金収入は夫婦で月23万円。さらに、退職金やこれまでの貯蓄を合わせて約3,000万円の貯金があります。
住宅ローンの返済は80歳まで続きますが、給与収入がなくなったいま、家計収支は毎月約3万円の赤字。30年間で単純計算すると約1,000万円のマイナスとなりますが、それでも2,000万円の貯金は手元に残る計算です。
「現役のころに比べ出費も減っていくだろうから、このままいけば生活には困らないだろう」
「そうね。でもあんまり節約ばかりじゃつまらないから、たまには旅行にでも行きましょうよ」
夫婦はそう楽観的に考え、穏やかな老後生活を思い描いていました。しかし、そんな2人を待ち受けていたのは、想像もしなかった現実でした。