「表面利回り」は「実質利回り」とは異なる
『金持ち父さん貧乏父さん』は「借金で不動産投資」の火付け役
レバレッジを利かせて資産を増やす——。自己資金が十分になくても借り入れを上手に使って資産を増やす方法が書かれたロバート・キヨサキ氏の著書『金持ち父さん貧乏父さん――アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(筑摩書房)の基本的な考え方だ。本書は2000年に日本で出版され、「インカムゲイン(運用して利益を得る)型」不動産投資の火付け役となった。
家主業の前提条件は不動産を所有していること。その不動産をまず買うことから始まるが、その不動産購入資金を金融機関から融資を受けることで、サラリーマンでも資産を増やせる方法として注目を集めたのだ。だが、借金ありきの賃貸経営は、借金のコントロールが財務状況に大きく影響するだけに、正しい知識がないと資金繰りに追われてしまう。
近年は金融機関の融資審査が厳しくなったため、自己資金ゼロではアパートや一棟マンションを買えなくなったが、融資を受けて「かぼちゃの馬車」をはじめ、積算評価が出やすい地方の中古一棟マンションなどを買った人は、今大変な思いで経営していることだろう。自己資金がゼロということは、それだけ毎月の家賃収入から差し引かれる借入返済額が大きいということであり、高い金利で借りていたら、資金繰りが苦しくなるからだ。
少額の元手から投資を始め、不動産を買い進め資産を築いた家主の代表選手といえば、『「お宝不動産」で金持ちになる!——サラリーマンでもできる不動産投資入門』(筑摩書房)の著者の沢孝史さんだろう。
沢さんは、サラリーマン時代に奥さんと2人で貯めた資金で、コンビニエンスストアのFCに加盟し開業するも、売り上げが伸びず、4カ月で閉店するという苦い経験をした。コンビニエンスストア事業の経費として重くのしかかったのが、実は「賃料」だった。そこで、賃料の支払い先であった家主という職業に目を付けた沢さんは、1998年から不動産を取得し始め、現在、総投資額27億円、債務を差し引いた純資産はなんと4億円を保有するまでになった。
不動産による資産形成の成功者である沢さんは、常々「不動産投資には、『利回り』と『不動産価格』という2つの落とし穴がある。そのことに注意して購入する不動産を選ぶべきだ」と話す。
まず、「利回りの落とし穴」とは何か。利回りとは、不動産購入額に対して1年間で得られる収入の比率のこと。5000万円の不動産を購入して、年間家賃収入が500万円なら利回り10%、年間家賃収入が400万円なら利回り8%となる。この利回りは収益不動産の広告に明示されているが、その数字はあくまでも「表面利回り」であり、借入金返済額、管理費、修繕費等の支出や空室率は入っていないため、実質利回りとは異なる。