「元利均等」か「元金均等」か、それが問題だ
また、この実質利回りを「金利+5.5%」として同じ条件で計算してみると、1000万円の自己資金は1044万円と、44万円しか増やすことができない。さらに「金利+5%」で計算すると、236万円減ってしまう。つまり、確実に資産を増やすためには「金利+6%」未満では厳しいという結果となった。
沢さんがこうした計算式を導き出すことができたのは、サラリーマン時代に損保会社に勤めていた経験が大きいそうだ。交通事故等での示談交渉で使用していた賠償額の計算の中での逸失利益の算定方法が、不動産を購入し賃貸業をする際にも役立ったという。逸失利益の算定は、将来もらう収入を今もらうのであれば、その間の利息は差し引かれるという考え方に基づいて行われるが、これは不動産賃貸業の、将来得られるであろう利益に対し、今いくら投資すれば採算が取れるのかという考え方に通じるものがあると気づいたのだという。
「元利均等」か「元金均等」か、それが問題だ
また、沢さんが着実に不動産を増やせたのは、借り入れのバランスを毎月確認して投資してきたからだ。
「返済の総額だけを見るのではなく、元金と金利のバランスを見ることも重要」と語る沢さんは月々の返済額のうち、金利が元金よりも多いと資金繰りが厳しくなると指摘する。
元金とは実際に借り入れた金額のことで、金利とは借入金に対する利息のことだ。金利には「変動金利」と「固定金利」があり、固定金利に比べて変動金利は市場金利に連動して見直されるため、低く設定されている。固定金利の場合は3年、5年、10年と期間があり(これ以外の期間のケースもある)、低金利で近い将来金利上昇が予測されるとき、また、支出があらかじめ計算できるため、返済計画が立てやすいとの理由から選択されるケースもある。
元金と金利のバランスは、借り入れの返済方法によって大きく異なる。
たいていの人は元利均等を選択する。不動産を購入して初期段階でのキャッシュフローが多いからだ。返済期間の初期段階では、返済額に占める金利の割合が大きいため、税務上の経費が多くなり、税額も少なくなる。一方、元金均等は初期段階においては返済負担が大きいが、元金を早く減らせるため、返済総額は元利均等よりも少なくなる。
以上のことを踏まえて、「元金と金利のバランスを見る」とはどういうことかというと、沢さんは「金利の変化による元金返済割合、毎月返済額に占める金利支払い分の割合を確認する」と話す。このそれぞれの割合を確認して、どちらの返済方式が得策かを判断するのだという。では、それぞれの割合は金利の変化でどのように変わるのかを見てみよう。