新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

全国で街同士の競争の時代が始まる

この街ではこうしたテーマをもとにここで暮らす人々に多くの技術を体感し、サービスを享受してもらおうというものです。

 

トヨタ自動車のWovenCityは自動車や道をテーマにした新しい街ですが、豊田章男社長は会見で、街づくりについてトヨタ一社だけではできないとし、他の多くの異業種と連携して作り上げていく、と述べています。通常であれば、街づくりには国内のデベロッパーと手を組んでいくのが常道ですが、今回の計画ではデンマークのビャルケ・インゲルスという若手建築家を招き、開発を進めるとのことです。

 

ポスト・コロナの時代に選ばれる街になるには、それぞれの街がどのような特徴を打ち出していくかにかかっています。それはインバウンドを呼び込むような、ただの観光都市ではないはずです。

 

同じ外国人がテーマであっても、たとえば、外国人との交流ができるとか外国の仕事を受注できるとか、あるいはある国の歴史や文化を勉強できるなどの特徴ある生活の実現が可能になるような、そういったキャラクターを持った街になることです。

 

またその街に属し、街中で活動することによって地域通貨などによるいろいろなポイントが付与され、それを活用できるような街が出てくるでしょう。それは単なる商売だけでなく、地域でのボランティア活動やアイデア提供のレベルでもポイント付与がなされれば、地域内の活動はより活発なものとなるでしょう。

 

街の基本インフラとしてどんな種類のレイヤーを構築していくのか、提供するレイヤーの内容によって、その街を指名して住む人が現われる、そんな街づくりがポスト・コロナの主役となりそうです。

 

このことは当然、街同士の競争の時代の幕開けを意味します。将来にわたって人口は減少を続け、日本は高齢化の一途をたどることは逃れようがありません。そんな時代環境の中、「散って」生活することを選択せざるをえなくなったわれわれは、24時間生活して快適な街を自らが選択していく必要があります。そのためのレイヤーづくりがこれからのテーマなのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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