新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

トヨタ自動車が工場跡地に新しい街をつくる

コロナ禍は時間がかかりますが、やがて人類はこれを克服していくでしょう。それは過去の事例がすべて物語っています。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

ただ、人々が集中して働く、生活することの不合理性に気づいた先の社会をどう見るかという問題です。情報インフラとしてさまざまなレイヤーを街に構築していくことは、こうしたレイヤーを通じて、街にあるソフトウェアをみんなでシェアすることで、何でもかんでも所有をするという経済不合理性を追求せずに、生活を豊かなものにしていくことにつながるのです。

 

トヨタ自動車の豊田章男社長は2020年の年頭あいさつにおいて、驚くべき構想を披露しました。静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本裾野工場を20年末に閉鎖。21年初頭からこの跡地で新しい街づくりをすると、公言したのです。通常、主力工場の閉鎖は暗いニュースであり、工場で働く従業員の雇用や跡地の売却などが話題の中心となるはずですが、豊田社長の顔は明るく、社員全員に「未来」を語るものでした。

 

対象となる敷地面積は最終的には70.8万平方メートル、東京ドームの約15個分にも及ぶ広大なものになります。街の名称は「WovenCity」、Wovenとは英語で「織る」という意味です。この名前は、今回の街にどういう意味合いがこめられて命名されているのでしょうか。

 

トヨタ自動車の発表によれば、それは街中にある道の構造にあると言います。この街では道を3つの属性によって分類しています。

 

(1)完全自動運転車や電気自動車のみの専用道
(2)歩行者とパーソナルモビリティが共存する道
(3)歩行者専用の遊歩道

 

つまり、生活に必要な道を3つの属性に応じて街中に「織り込んで」いるのです。

 

トヨタ自動車ではこの街において、さまざまな実証実験を行なうこともテーマに掲げています。その内容はCASE、AI、パーソナルモビリティ、ロボットなどといった分野です。CASEというのはまだ耳慣れない単語ですが、

Connected,Autonomous,Shared&Services,Electricを表わします。Connectedとは自動車が外部のさまざまな情報と「つながる」ことを意味します。Autonomousとは自動運転、Shared&Servicesはライドシェアやタクシーの配車サービス、Electricは電気自動車です。

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不動産で知る日本のこれから

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不動産激変 コロナが変えた日本社会

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