2018年に社会問題となった、新築シェアハウス“かぼちゃの馬車"破綻事件以降、不動産投資へのネガティブなイメージが広がっています。しかし、ある一定の条件を揃えることで、収益不動産を活用した資産形成は実現できます。ここでは、だれも気づかなかった投資用不動産物件の評価基準について詳述します。※本記事は『新富裕層のための戦略的不動産投資』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

 

 【ファンドバブル期】収益還元法 

 

その10年後くらいにファンドバブルがやってきます。このときは、銀行が疲弊しており、金利が下がっていったにもかかわらず、不動産が売れないという状況が続いていました。そんななか、海外から見ると非常に割安で投資効率がいいと判断されたため、ゴールドマンサックスやリーマンブラザーズなどさまざまな外資系のファンドが20世紀の終わりから21世紀にかけて、日本の不動産を買い漁っていったのです。

 

そうして、外資が買うことで日本の新興デベロッパーも刺激されるかたちで活気づきました。ファンドバブル期は新興デベロッパーの活躍期だったともいえるでしょう。当時は、期待利回りと換金性を重視して投資をしていました。バブル期のように値上がり益ではなく、投資に対するランニングのリターン(賃料収入)に価値を置いていたのです。

 

簡単にいえば、「この物件は、年間で1000万円の賃料収入があり、期待する利回りは10%。だから1000万円÷0・1=1億円、つまり1億円の価値」というのが収益還元法です。

 

では、なぜこのファンドバブルは崩壊したのか。私は「換金のタイミングが決められていたから」だと思っています。

 

例えば、5年間、ファンドでまわしたうえで、投下資金を戻すとして、5年後の出口の時点で相場が上がっていればいいですが、相場が下がっていると損します。出口の期日が決められている限り、そのときの相場に左右されます。

 

当然、土地の価格は上がり下がりするものなので、売るタイミングでどうなっているかは誰にも分かりません。出口のタイミングが決まっているというのは、いいときは問題ないのですが、悪いときは破たんします。これがファンドバブルの崩壊だったと思います。

 

もう一つ理由として挙げるとするならば、不動産の期待利回り(賃料と入居率)が実態とは乖離していた、つまり机上の空論になっていた可能性は十分にあります。ファンドバブル時代は、前述したようにバブル期の取引事例比較法の失敗を受けて「収益還元なら失敗しない」という理屈が受け入れられていました。

 

そもそも期待どおりに賃料が入ってこなかったり、想定以上にさまざまなコストがかかったり……リスクをよく考えずに買ってしまったツケがあとになって肥大化していったのです。

 

 【現在】積算法 

 

最近のスタンダードは、収益還元だけではなく積算法もしくは再調達原価法といいますが、相続税評価の土地の評価と、建物は再調達価格(もう一度今建てるとしたらいくらくらいかかるか)で算出する評価も、銀行評価として使われています。

 

土地積算は敷地面積×路線価、建物は延べ床面積×再調達価格×残存年数/耐用年数となります。今まで見てきた評価のなかで、一番担保価値としての意味合いが強くなります。また、積算が出る物件として、「面積が大きい物件」「築年数が新しい物件」になりやすいという傾向があります。郊外型RC物件は広い土地にゆとりのある間取りで建設されていることが多く、積算評価が伸びやすいという特徴もあります。

 

こうした30年程度のサイクルを見ても、評価の基準が時代とともに変わっていくことが分かります。

 

そして今後、また基準がより普遍的価値に近づいていく可能性は大いにあり得ます。ですから繰り返しになりますが、今物件を買える立場にある属性の人たちは、「収益性が高いから」「積算が出るから」といった理由ではなく、地形や道路付け、環境、インフラなど「実」の部分を重視すべきです。

 

ただ、中古物件には注意しなくてはいけないポイントがあります。中古だと、現在は収益が上がっていても、法的な規制がかかったり、トレンドが変わったりして価値が下がり、最悪な場合は価値がゼロになるリスクがあります。

 

例えば、旗竿の土地は〝今〟はいいとされていますが、法的な網をくぐり抜けて建てているようなものは普遍的価値があるとはいえません。ほかにも、崖地に無理やり建てている物件なども危険でしょう。利用の方法や、収益性で見たときの費用対効果が変わったときに土地としての資産性、価値がなくなってしまいます。

 

ですから、旗竿地や崖地などの変化球には手を出さずに、普遍的価値の見方や現在の評価方法のトレンドや問題点を知っておくことが求められているのです。


 

杉山 浩一
株式会社プラン・ドゥ 代表取締役
宅地建物取引士
マンション管理士

 

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