(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産投資が節税になるといわれることがあります。しかし、漠然と「節税」を目的として投資を行うと、間違いなく損をすることになります。節税を主な目的として不動産投資を行う場合は、基本的なしくみ、対象となる物件のタイプ等について正確に理解しておく必要があります。本記事では、不動産投資が節税につながるしくみと、どのような物件を選ぶべきかについて順を追って解説します。あわせて、注意点についても指摘します。

目次
1. 不動産投資がなぜ節税になるか
1.1. 不動産投資が節税に利用しやすい理由
1.2. 不動産投資がもっとも取り組みやすい節税手段である理由
2. 中古建物の「減価償却」で「マイナス」を計上する
2.1. 減価償却とは
2.2. 償却メリットが大きいのは「中古建物」
2.3. 減価償却が終わったあとの出口は?
3.「5棟10室基準」をみたせばさらに年65万円のマイナスを作れる
4. 相続税の節税にもなる
5.「所得金額900万円未満」はおすすめできない?
6. 法人化によるメリット
7. あくまでも「投資」であることを忘れない
まとめ

1. 不動産投資がなぜ節税になるか

不動産投資がなぜ節税になるか
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まず、不動産投資がなぜ節税になるといわれるか、基本的なしくみとともに解説します。

 

結論からいえば、不動産投資のうち、節税のメリットを享受できる可能性が高いのは「中古建物」、なかでも特に「築22年超の木造建物」への投資です。

 

以下、順を追って説明します。

 

1.1. 不動産投資が節税に利用しやすい理由

不動産投資とは、不動産を購入し、賃貸して収益(賃料収入)を得ることをいいます。賃料収入は「不動産所得」として所得税・住民税の課税対象となります。

 

不動産所得で特徴的なのは、マイナスが出た場合に、他の所得から控除することができるということです。これを「損益通算」といいます。

 

所得類型は10種類ありますが、そのなかで損益通算が認められているのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4種類だけです(頭文字をもじって「富士山上(ふじさんじょう)」と呼ばれます)。

 

これらのなかで、ある程度の所得がある人がもっとも取り組みやすいのが、「不動産所得」を獲得する活動、すなわち不動産投資です。

 

1.2. 不動産投資がもっとも取り組みやすい節税手段である理由

どういうことか説明します。

 

まず、「事業所得」については、実際に何らかの「事業活動」を行わなければなりません。しかも、判例上、「独立性」「営利性・有償性」「反復継続性」といった厳格な要件が要求されており(最判昭和56年4月24日)、それをみたさなければ「雑所得」とされ損益通算が認められなくなります。

 

なお、2022年10月、国税庁から、会計帳簿をつけていれば原則として「事業所得」と認めるという基準が示されています。

 

次に、「山林所得」「譲渡所得」はもともと所定の資産を保有している人のみが得られる所得であり、所得の発生原因自体が特殊なものです。また、その性質上、損益通算の対象となるまとまった額のマイナスが発生しにくいといえます。

 

これらに対し、不動産投資により得られる「不動産所得」は、よく「不労所得」と表現されることがあるように、基本的には、不動産を他人に使用・収益させればお金が入ってくるものです。維持管理・修繕等の費用はかかりますが、自らの手で日常的に行わなければならない業務はありません。したがって、損益通算が認められている「富士山上」のなかで、多くの人にとって、もっとも取り組みやすいものであるといえます。

2. 中古建物の「減価償却」で「マイナス」を計上する

中古建物の「減価償却」で「マイナス」を計上する
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上述のように、不動産投資による節税とは、マイナスを計上し、それを他の所得と「損益通算」することによって税金を減らすというものです。

 

では、どのようにマイナスが計上されるのでしょうか。

 

不動産所得は以下の計算式で求められます。

 

収入金額-必要経費

 

このうち必要経費の額が大きくなれば、マイナスが発生します。

 

必要経費には、物件の維持管理等の費用が含まれますが、節税という面からは「減価償却費」が圧倒的に重要です。

 

また、減価償却費を大きくしようとするのであれば、「新築」はおすすめできません。「中古建物」に限ります。

 

以下、減価償却費とは何かを説明し、そのうえで、なぜ中古物件でなければならないのか、解説します。

 

2.1. 減価償却とは

減価償却とは、資産の購入代金額を、複数の年度にわたって「必要経費」として計上していくことをさします。

 

資産が使用・収益されることにより、モノとしての「使用価値」が下がっていくと考え(減価)、それを、費用として計上(償却)するのです。「使用価値」は「市場価値」と異なり、物理的な意味ですり減っていくというイメージです。

 

不動産投資においては、「建物」「建物附属設備」が減価償却の対象となります。なお、土地は使用価値が物理的に低下することがありえないので、減価償却の対象にはなりません。

 

償却期間は建物の種類ごとに「法定耐用年数」として定められています。新築の場合は以下の通りです。

 

  • 木造:22年
  • 軽量鉄骨造:27年
  • 重量鉄骨造:34年
  • RC造・SRC造:47年

 

また、建物の場合、1年あたりの減価償却費の額は、「定額法」といって、建物の購入代金額を、償却期間(法定耐用年数)で除して求めます。

 

たとえば、購入代金4,400万円の木造建物(法定耐用年数22年)の場合は、以下の通りです。

 

4,400万円 ÷ 22年 =220万円

 

これでは、賃料収入から差し引いても、たいしたマイナスは計上できません。減価償却費の計算方法について「定額法」を採用する限り、償却期間(耐用年数)が短くなければ意味がないのです。

 

2.2. 償却メリットが大きいのは「中古建物」

償却期間(耐用年数)が短いのは、中古建物です。

 

すなわち、中古の建物の耐用年数は「法定耐用年数-築年数×0.8」で決まります。ただし、法定耐用年数より築年数が上回ったあとは、以下の通りとなります。

 

  • 木造(築22年超)⇒償却期間4年
  • 軽量鉄骨造(築27年超)⇒償却期間5年
  • 重量鉄骨造(築34年超)⇒償却期間6年
  • RC造・SRC造(築47年超)⇒償却期間9年

 

築古、それも、築年数が法定耐用年数を上回っている物件を選べば、1年度あたりの減価償却費の額が大きくなります。その分、多額のマイナスを計上し、それを他の所得と損益通算できるということです。

 

したがって、「節税」という観点のみを考えると、特におすすめなのが償却期間が短い「木造・築22年超」の物件です。

 

たとえば、建物価格4,400万円であれば、年1,100万円ずつ4年間にわたって減価償却費を計上できます。それによって発生した不動産所得のマイナスを、損益通算によって他の所得から差し引くことができるというわけです。

 

2.3. 減価償却が終わったあとの出口は?

出口としては、償却が終わってからさらに1年後に売却することがおすすめです。なぜなら、5年保有したあとで売却する場合は「長期譲渡所得」と扱われ、他の所得とは別に税率20%(所得税15%+住民税5%)の「分離課税」となるからです。

 

なお、最悪の場合、買い手がつかず、建物を解体して更地として売却することになるかもしれません。

 

そういう場合、木造であれば、解体にかかる費用が他の種類の建物よりも安くてすみます。このことからしても、木造の築古物件がもっともおすすめといえます。

3.「5棟10室基準」をみたせばさらに年65万円のマイナスを作れる

「5棟10室基準」をみたせばさらに年65万円のマイナスを作れる
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なお、不動産の貸付が「事業的規模」に達していれば、「青色申告」が可能となります。青色申告をすると、65万円の「青色申告特別控除」を受けることによって、より大きな必要経費を計上することができます。

 

「事業的規模」の基準は、一戸建て、アパート、それぞれについて以下の通りです。いわゆる「5棟10室基準」です。

 

  • 一戸建て:おおむね5棟以上
  • アパート:独立した室数がおおむね10室以上

 

なお、年65万円の青色申告特別控除の他にも、「青色事業専従者給与」を必要経費に算入することができます。また、所得税・住民税の累進税率が抑えられることにもつながります。

4. 相続税の節税にもなる

相続税の節税にもなる
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不動産投資を行うと、相続税の節税にもつながることがあります。というのも、相続税法上、評価額(相続税評価額)が低く見積もられるからです。

 

すなわち、まず、建物の評価額は「固定資産税評価額」といって、他の資産よりも低く評価されます。固定資産税評価額はイメージとしては実勢価格の70%程度です。

 

これは、建物が人の居住や事業等、生計を立てるために使われることがほとんどだからです。不動産投資も、収益獲得のための活動であり、その例外ではありません。

 

次に、底地については、「小規模宅地等の特例」の要件をみたせば、「固定資産税評価額」からさらに50%割り引かれます。

5.「所得金額900万円未満」はおすすめできない?

「所得金額900万円未満」はおすすめできない?
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不動産投資による節税は、所得金額900万円以下の場合、「おすすめできない」といわれることがあります。

 

しかし、それは誤解です。築22年超の木造建物であれば、購入代金を4年で償却できるので、多額の減価償却費を計上できるというメリットは損なわれません。

 

厳密にいえば、所得金額900万円以下の場合、「出口」の優位性が多少損なわれるだけです。

 

すなわち、所得税・住民税においては、累進税率が採用されています。これは、所得が高くなっていくほど、段階的に適用される税率が上がっていくというものです。そして、国税庁HPの速算表によれば、所得金額900万円を境に、適用される税率が「23%」から「33%」へと上がっています。

 

ここで思い出していただきたいのが、不動産投資の「出口」が5年後以降の物件の売却だということです。5年以上保有した物件を売却する際、譲渡益は税率20%の分離課税となります。このとき、所得金額900万円の人であれば、そもそも適用される税率が23%にすぎないので、メリットが大きくないという意味です。

 

不動産投資による最も重要なメリットは、多額の減価償却費を計上して不動産所得のマイナスを計上し、それを他の所得と「損益通算」をすることです。したがって、出口のみとらえて「所得金額900万円未満の人はおすすめできない」というのは、ミスリーディングです。

6. 法人化によるメリット

法人化によるメリット
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最後に、「法人化」についても簡単に触れておきます。

 

不動産投資、特に築22年超の木造建物への投資を法人で行う場合、個人と同様、短期間で大きな減価償却費を計上することができます。しかも、法人税の計算においては所得の発生原因による区別がないので、損益通算をするまでもなく法人所得から差し引くことができます。

 

その他に、法人特有の以下のメリットがあります。

 

  • 法人税の税率の上限が個人所得税の税率より低い
  • 費用(損金)に算入できる経費の項目が個人より多い
  • 家族を役員にして所得を分散しやすい

 

ただし、法人は設立のコストがかかりますし、一度設立すると、利益の有無にかかわらず法人住民税がかかり、決算の申告も毎年度行わなければなりません。

 

また、出口で不動産を売却する場合、個人と異なり、「長期譲渡所得」における20%の分離課税のような特典が受けられません。

 

さらに、役員報酬等を支給すると社会保険料の負担も発生します。

 

したがって、法人化するかどうかは、税理士等の専門家に相談してシミュレーション等を行う必要があります。

7. あくまでも「投資」であることを忘れない

あくまでも「投資」であることを忘れない
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このように、不動産投資は、中古建物、特に築22年超の木造建物であれば、節税メリットを享受できる可能性が高いといえます。

 

ただし、注意しなければならないのは、不動産投資はあくまでも「投資」であることを忘れてはならないということです。投資である以上、収益をきちんと得られなければ意味がありません。

 

減価償却費でマイナスを作り、他の所得と損益通算して税金を抑えることができたとしても、投下資本がきちんと回収できなければ、意味がありません。

 

したがって、信頼できる専門家の知見を借りて、物件の状態や立地条件を慎重に吟味する必要があります。

まとめ

まとめ
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不動産投資が節税になるのは、中古不動産、特に築22年超の木造建物です。なぜなら、建物の購入代金を4年間で「減価償却費」として計上でき、しかも、それによる不動産所得のマイナスを、「損益通算」により他の所得から差し引くことができるからです。

 

また、それに加え、いわゆる「5棟10室基準」をみたせば、「青色申告特別控除」等のメリットを享受することもできます。

 

出口としては、5年後以降に売却すれば、売却益について20%しか税金がかからないというメリットがあります。

 

なお、法人で不動産投資を行う場合は、個人と比較して税率が相対的に低い、費用計上できる項目が多いなどのメリットを受けられることがあります。

 

ただし、いかに節税とはいえ、あくまでも「投資」であることを忘れずに、物件選びには慎重を期する必要があるといえます。

 

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