新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

業態を変えて生き残るバーやクラブ

また現代の若い世代は、こうした遊びには興味がなく、会社の飲み会も敬遠して家に帰りたがるという傾向は、コロナ前から指摘されていました。昭和から平成初期の頃に会社に入社した世代が退場する頃を境に、銀座や六本木のバーやクラブの灯はなくなる運命にあるとも言われてきました。そういった意味では今回のコロナ禍はこの業態の余命をさらに短くした、とも言えそうです。

 

それではこうした狭小店舗のすべてが消滅し、人々は外で食事もせずに自宅でインターネットだけに依拠する生活になっていくのかと言えば、そうではありません。人は常に他人との交流、接触を通じて生きていくものだからです。

 

まず居酒屋やレストランは、都心部から、人々が生活する街に店舗を移していくでしょう。多くの人々が、自分たちが暮らす街の中で一日の多くの時間を費やすようになるわけですから、需要のあるところに店舗を構えるのは当然の行動です。もちろん感染症対策云々は、これからもいろいろな知見が出されることでしょうが、居酒屋という業態自体がなくなることはないと考えます。

 

バーやナイトクラブはどうでしょうか。おそらく業態を変えて生き残っていくと私は見ています。キャバクラのような大勢が集まってどんちゃん騒ぎをするような形態のものは廃れていくでしょうが、大人の社交場としてのバーやクラブは、その数こそ減るものの一定数が形を変えて生き残っていくと思われます。

 

居酒屋などと異なり、バーやクラブは静かに語らう場としては好都合な場所。取引先とのやや込み入った話、接待などを行なう場としての機能は今後も保ち続けるはずです。

 

経営者の多くは孤独です。従業員や取引先と離れて、静かに酒を飲む。仕事とはまったく関係のない話をすることが活力源ともなります。そうした意味でそれぞれの店がこれまでのマスを相手にしたようなものではなく、限られた顧客に対して独自のサービスを提供していくようになると思われます。それは芸術や文化を標榜するバーがあってもよいでしょうし、共通の趣味を持つ人たちのクラブがあってもよいと思われます。

 

以前は銀座には、シャンソンバーのようなものがたくさんありました。シャンソンは銀座の華でもありました。今でも銀座の街には多くの画廊があります。音楽や絵画をテーマにしてもよいでしょうし、文学や漫画を標榜する店があっても良いと思います。また経営者同士が秘密裏に集まる店はいつの時代でも必要でしょう。情報通信技術も活用した新しい業態のバーやクラブも出てくるものと思われます。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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