新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

狭小店舗の居酒屋、バー、ナイトクラブは3蜜

今回のコロナ禍で大きな犠牲を強いられたのが、街中にある居酒屋やバー、ナイトクラブなどの狭小店舗です。これらの店舗はその多くが個人事業主や中小零細法人による経営なので、国や自治体からの休業要請に対しては理屈としては理解できても、多くの店舗が自らの存続問題に直面することになりました。

 

狭小店舗は、コロナ禍で問題となった3密(密閉・密集・密接)のすべてを備えています。

 

コロナ禍で大きな犠牲を強いられたのが、街中にある居酒屋やバーなどの狭小店舗だった。(※写真はイメージです/PIXTA)
コロナ禍で大きな犠牲を強いられたのが、街中にある居酒屋やバーなどの狭小店舗だった。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

たとえば居酒屋。居酒屋の良さは、お客さんたちが肩を触れ合わんばかりにして座り、友人知人や職場の同僚と語り合う。昔話でも人生の悩みでも会社の愚痴でも週末の競馬や野球の話でも、テーマは自由です。馴染みのお店であれば店の大将や女将さんとの掛け合い、客同士が仲良くなって乾杯する、人と人との接点が生まれ盃を酌くみ交わすことで日頃のストレスを解消したり、新たな希望を抱いたりすることができます。

 

東京の新橋などの横丁では、店に入りきらなくなった客はビールケースを逆さまにして路上に並べ、ケースの上にベニヤ板を敷いてテーブルや座席にして飲む。幸せな光景です。できればポスト・コロナの時代にも残り続けてほしいものです。

 

ところが今回のコロナ禍、多くの店舗が休業を余儀なくされました。当初の自粛要請はとりわけ厳しい内容で、開店しているところでも営業は夜の8時まで。しかもアルコール類の提供は午後7時まで。これでは落ち着いて飲むことはできません。さらに多くの会社がテレワークを実施したために街中に主力客であるはずのサラリーマンがいない、という事態に陥りました。

 

ある立ち食いそばチェーンも、繁華街にあって一番の売上を誇っていた店舗に、まったく客の姿がなくなり、チェーン店成績の最下位グループに落ち込むなど驚きの惨状となりました。

 

飲み屋街に繰り出すことができないサラリーマンの間で実験的に行なわれたのが、オンライン飲み会でした。オンライン上で飲み会をやるということに対しては、私のみならず多くの人々が違和感を覚えたはずです。そうした飲み会は若い人やIT系の人がやるものだと思っていたからです。ところがこのコロナ禍では、飲みに行けないので致し方なくオンライン飲み会をやってみることになったというのが実態でしょう。

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