新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

意外と違和感がなかったオンライン飲み会

私もやってみましたが、当初思っていたほどの違和感はなかったというのが正直な感想です。お酒やつまみは自分で好きなものを用意すればよいし、家飲みなので終始リラックスできます。お勘定を心配する必要もありません。自宅にいるという寛ぎは居酒屋とはまた違った側面が出てしまうのでしょうか、真面目そうだった人が意外とお茶目だったり、急に背後を家族が通過する、ペットが闖入するなどというハプニングも楽しいものです。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

気になるのは、居酒屋での飲み会はメンバーととりとめのない話をどんどん話題を変えてできるのに対して、オンライン飲み会は一つの話題について全員で聞く。つまり会話が1対1、あるいは1対全員のデジタルで交わされることに疲れを覚えることです。メンバー全員が一つの話題で話すのは会議の場でのことであって、飲み会などでは、周囲2、3名で共通の話題で盛り上がる、ときおり隣りの話題に突っ込む、全員で盛り上がるなどの繰り返しなのですが、これがオンライン上では、会議をやっているようになってしまうのが難点でしょうか。

 

もちろん今後オンラインの技術がもっと進化して、相手との会話にもいろいろな工夫が施されてくると思われます。低コストで、自宅で気楽に飲める楽しさがさらに追求されていくものと思われます。

 

さてこの居酒屋文化、コロナは感染症なのでやがて時間がたてばワクチン開発などが行なわれて終息に向かい、3密であることを理由に敬遠されるようなことはなくなると思われます。

 

むしろ懸念されるのが、主要な顧客であるサラリーマンの働き方が変わってしまうことです。ポスト・コロナにおける働き方がテレワーク中心になって会社に毎朝毎夕通ってこなくなる、そしてそのことが会社組織を変えていくことで、会社に対しての帰属意識が薄れる、会社と社員が1対1で向かい合うようになると、会社に対する愚痴がなくなるのではないかという危惧です。会社組織への従属が薄まれば、同僚との飲み会も必要がなくなるし、みんな自宅やその周辺のコワーキング施設にいれば、そもそも都心部には出てこなくなってしまいます。

 

その点についてはバーやナイトクラブも同様です。都心部にサラリーマンがいなくなることは、こうした業態のお店にとっては顧客がいなくなってしまうことを意味します。居酒屋やレストランに行って一杯やってからの二次会需要の受け皿となってきたわけですから、一次会の需要がなくなれば二次会の需要も当然なくなるというものです。

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不動産で知る日本のこれから

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