仕事以外の文化、芸術に対する関心が高まる
日本のサラリーマンの多くは会社での仕事内容や会社が属する業界については熱弁を振るえるものの、文化や芸術などについて一定の知見や見識を持っている人は少ない、と言いました。
しかし、会社への通勤という無駄な時間から解放され、在宅や近隣のコワーキング施設で働くことで、会社だけを見て日々を過ごす人生から距離を置くことができるようになります。ましてや一つの会社にだけ身を置いて、会社の一挙手一投足に振り回されることなく、日々を過ごすことができるようになれば、生活の仕方にも大きな変化が表われてくると思われます。
空いた時間を使って地元の大学で社会人講座を受講してみるのも、お勧めです。不肖私も、以前ふと目にした「グレーター東大塾」という東京大学が開催する社会人塾に応募したことがあります。この塾は東京大学が年に2回程度、あらかじめテーマを決めて毎週1回、全10回にわたって講義を行なうもので、東京大学の先生のみならずそのテーマにかかわる専門家の先生が、毎回交代で受け持つユニークな形式のものでした。「持続可能な成長型超高齢化社会に向けて」というテーマは私の関心事でもあったので、スケジュールに追い回される日々の中、毎週この時間帯だけは死守して受講してみました。
結果は大変有意義なものでした。一つのテーマであってもこれを歴史学、地域社会、働き方、移民政策、労働、若者支援、社会保障、地方創生、医療など、ひじょうに多くの切り口で教えてくれる講義は毎回楽しみで仕方がありませんでした。私は東京大学卒業ではありますが、学生時代こんなに身を入れて勉強してこなかったことに今さらながら恥じ入ることとなりました。やはり人はいくつになっても学ばなければならない。また重ねる年輪によっても関心事は変化しますし、新たな興味が沸々と湧き出るものであることを実感できました。
一日のほとんどの時間を会社の中の一員としてしか過ごせないサラリーマンに、文化を語るのはしょせん無理な話でしたし、そうした話題は職場や接待の場でも敬遠されるか、変人扱いされるのがオチでした。ポスト・コロナにおいては、生活にゆとりが生まれ、自分が興味を持つ対象について時間をかけて学ぶことができるようになります。
NHKのBS放送の番組に「駅ピアノ」「空港ピアノ」「街角ピアノ」という番組があります。この番組は世界各国の駅や空港、街角に置かれて、誰でもが自由に弾くことができるピアノに焦点を当て、ピアノを弾く人の簡単なプロフィールと弾く曲名、そして彼や彼女に対する簡単なインタビューを通じて人々の心象に迫るというものです。
番組を見ていてとても驚かされるのが、音楽を専門にやっている人はむしろ少なく、エンジニア、大学の教授、清掃人、店員、学生、移民やコンサルタントなど幅広い職種の人たちが、思い思いに自らの境遇や夢を自らが奏でる曲に乗せて語る姿です。