新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

都心に家を買うのは富裕層の一部のみ

テレワークがあたりまえになり、毎日会社に行く必要がなくなれば、多くの人が都心を避けて郊外に住むようになるかと言えば、そうばかりとは言えないでしょう。職種にもよりますが、完全にテレワークだけで仕事が完結するとは限らないからです。

 

また、都心部の魅力は仕事における利便性だけで語られるべきものではありません。ネットによるバーチャル空間での演出がどんなに進んだとしても、都心には多くのエンターテインメント施設が残り、文化や芸術が楽しめる劇場や映画館、競技場がその存在を主張することでしょう。郊外部では満足な施設がすべて足りることはなかなか叶わないことも、人々の都心への愛着が変わらない理由です。

 

都心マンションを賃貸する新しいライフスタイルが。(※写真はイメージです/PIXTA)
都心マンションを賃貸する新しいライフスタイルが。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

いっぽうで、これまでのように都心に住むというだけの目的のために、人生で予定されたほとんどの収入を住宅ローンのために費やすようなライフスタイルは消滅していきます。都心に家を買い求めて住むのは、富裕層の一部のみとなります。

 

そこで生まれる新しいライフスタイルが、都心のマンションを賃借することです。都心ライフを楽しむための拠点としての賃貸マンション需要は、ポスト・コロナ時代には大いに盛り上がることが予想されます。

 

たとえば平日は都心部のマンションを賃借する。そして週末は郊外の自分が気に入って購入した戸建て住宅で過ごすといったライフスタイルが、けっして絵空事ではなくなります。郊外の住宅は中古住宅なら、場所や内容によりますが、首都圏であれば3000万円以内で手に入れることは難しくありません。デベロッパーやゼネコンによる押し付けのデザインではなく、自分で好きなようにリフォームすれば、まさに自分のお城です。リフォームは水回りを中心に手を加えれば、家は見違えるように住み心地が良くなるものです。

 

また都心部では、仕事で使う、また子供の通学などを考えて賃貸マンションを選べばよいでしょう。子供の通学があるから郊外には住めないという人がいますが、子供の学校のためだけに家を買う必要はありません。借りればよいのです。

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不動産で知る日本のこれから

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