新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「出前」ビジネスは大きな収益源となる

デリバリーとは英語で「宅配」を意味する言葉です。家などの注文先に食事や商品を届けるのをデリバリーサービスといいます。デリバリーサービスと言えば、古くから日本人にとって馴染み深いのが、蕎麦屋の出前でしょう。蕎麦屋は蕎麦のほか、天丼や親子丼などを自転車やバイクなどで注文先まで送ります。街中の中華料理屋もラーメンやチャーハンなどを運びます。しかしこの形態の多くが、すでに自前の店舗があり、店内客のみならず、店周辺数百メートル程度の事務所や家に、自前の自転車やバイクで運ぶといった「おまけ」のサービスでした。

 

しかし「おまけ」と言っても出前はけっこうな収益源にもなるようです。私の知人の料理人は、初めて自分のお店を持とうと思ったとき、目星をつけたのが大きな病院そばの空き店舗だったと言います。彼はもともと和食の調理人でしたが、選んだメニューはラーメンとチャーハン。中華料理屋です。彼曰く「出前が多いと思ったから」というものです。

 

配達先は家や事務所でなくてもどこでも自由。位置情報システムで場所指定をすれば、届けることができる。(※写真はイメージです/PIXTA)
配達先は家や事務所でなくてもどこでも自由。位置情報システムで場所指定をすれば、届けることができる。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

まず大きな病院であれば、見舞客が多いだろうというのが最初の視点。見舞いを終えた客が小腹をすかせて立ち寄るのを狙いました。次に医師や看護師といった病院関係者は忙しい人たちだから、すぐに食べられるラーメンやチャーハンが喜ばれるだろうと思ったのです。そして彼が目論んだのは、夜勤など不規則な勤務形態の人たちが多い職場では必ず出前の注文が多いだろう、ということでした。ランチタイムや夕方だけの営業よりも売上が上がるのではないかと期待したのです。

 

結果は大成功。ランチは近隣の職場に加え、病院関係者や患者の家族、見舞客で大繁盛。不定期に出前の注文も入る。店はてんてこ舞いの忙しさになったと言います。夕方のみならず夜中の出前まで対応したため、一緒に働く本人の奥様が忙しさのあまり倒れ、お店を閉じることになったのは残念でしたが、出前ビジネス、馬鹿にしたものではなかったのです。

 

しかし、昔からあった出前サービスはあくまでも自分で作った料理を、外部の客からの電話による注文でさばくというスタイル。配達も店の店主や雇われ人が自転車やバイクで運ぶといった程度でした。

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