人生100年時代の長寿化と年金不安
人生100年時代――。そんな言葉が現実味を帯びている。厚生労働省が発表した2018年の平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳で過去最高を更新。内閣府が公表した「平成30年版高齢社会白書」によると、2065年には男性は 84.95歳、女性は91.35歳になるという。
長寿といえば60歳の還暦から始まり、70歳の古希、77歳の喜寿、80歳の傘寿、88歳の米寿に90歳の卒寿など、その節目に「長寿祝い」を行う。こうした風習があるように昔から長寿は「おめでたい」こととされている。だが、昨今のわが国では長寿を手放しでは喜べない状況になりつつある。
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2018年(平成30年)平均結果―(二人以上の世帯)」 によると、世帯主が60歳以上の高齢者世帯(世帯人数は2人以上)の貯蓄額は、平均値が2284万円、貯蓄保有世帯の中央値は1515万円となる。この数値を見て、高齢者ではない人たちの中には「結構資産があって羨ましい」と思う人は少なくないだろう。それもそのはず、年代別の貯蓄額を見ると、70歳以上と60~69歳の年代がトップ2の資産額で共に2000万円を超えているからだ。
一方、20代、30代、40代、50代の負債額は10年前と比べると増えている。「世帯主の年齢別貯蓄と負債及び持ち家率」の2008年と2018年の数値を比較してみると、30代は1329万円(516万円増)、40代は1105万円(151万円増)、50代は683万円(158万円増)だ。30代の負債額が特に増えているのは、持ち家率が 64.3%で、10年前と比較すると10.9ポイント増加していることと関係しているだろう。低金利と住宅ローン減税の影響が大きいと推察できる。
さらに、これから高齢者になる年代については年金不安もつきまとう。以前から「年金破綻」についてはまことしやかに語られてきた。そんな中で、金融庁がまとめた「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」が話題に上った。例の「老後2000万円問題」である。同報告書には、次のように書かれている。
「前述のとおり、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では(月々の実収入が20万9198円で実支出が26万3718円となるため)、毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。
当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、を考えてみることである。」