新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

有名進学校の盛衰は街の盛衰の歴史が隠されている

私立高校でもこの動きは顕著だ。開成高校や麻布高校といった東京大学合格上位の常連校は除き、私立高校の間でも今は都心部の学校に良い生徒が集まる傾向にあるからだ。

 

渋谷教育学園渋谷高校は、同系列の幕張高校が72名の合格者を出しているが、渋谷高校も19名、本郷高校はかつて東京大学合格者リストには縁のなかった学校だが5名、早稲田高校30名、海城高校46名はいずれも新宿区の学校、豊島岡女学園29名は豊島区の学校、攻玉社高校15名は品川区西五反田の学校だ。

 

実は、こうした「人の流れ」によって学校の進学成績が変わることは、不動産の現場でよく遭遇するできごとだ。たとえば大手デベロッパーなどによって広大な工場跡地に開発された大規模マンションでは、教育熱心な家庭が一時に多数引っ越してくることから、街の小学校や中学校の生徒の姿が激変してしまうというものだ。

 

ある大手デベロッパーの大規模住宅開発地では多数のマンション住戸が分譲され、このエリアの小学校に大量の「新参者」の小学生が流入してきたことから地元の子と争いになったという。この開発地はもともと港町であったことから、漁業関係や港の荷揚げ業者の子息が中心だった。そこの学校につるんとしたお坊ちゃま、お嬢ちゃまが大勢入ってきたことから学校は大混乱となった。初めのころはやんちゃ坊主に泣かされていた新参者だったが、最後は多勢に無勢。次々と入学してくる新勢力によって、学校の偏差値はどんどん上昇。やがてはそのエリアの一番の成績を上げる学校になってしまったというものだ。

 

このように、有名進学校の盛衰には実は街の盛衰の歴史が隠されている。最近ではマンションを選ぶ際、地元の小学校の良し悪しを徹底的に調査する親が多いという。街選びは学校選びの時代になっているのだ。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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