息子の帰省が「楽しみ」ではなくなった理由
連休初日の夕方、由美子さん(仮名・70歳)は、スーパーのレジでかごいっぱいの食材を精算していました。肉や刺身、ビール、菓子類。会計は1万円近くになりました。
翌日、38歳の長男・健太さんが帰省することになっていたからです。
由美子さんは5年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。月約17万円の年金を中心に生活しています。住宅ローンを完済した持ち家があり、貯蓄も約1,500万円ありましたが、「これから何年生きるかわからない」と、普段は無駄遣いを避けていました。
健太さんは就職を機に家を出し、現在は電車で2時間ほど離れた場所で一人暮らしをしています。以前は年に数回の帰省を、由美子さんも楽しみにしていました。
ところが、ここ数年は事情が変わっていました。
「駅に着いたから迎えに来て」
帰省するたびに車での送迎を頼まれ、家に着けば健太さんは荷物を置いてソファへ。夕食後の食器もそのままです。
翌朝には「朝ごはんある?」。昼になれば「何食べる?」。外出して夜遅く帰ってくる日には、「夕飯残しておいて」とメッセージが届きます。
洗濯物まで脱衣所に置かれていました。
「昔は私も、それくらいやってあげたいと思っていたんです。たまにしか帰ってこない息子ですから。でも70歳になったころから、3泊、4泊されると本当に疲れるようになりました」
食費も無視できません。普段は自分一人の簡単な食事で済ませていますが、息子が来ると肉や魚、酒を買い足します。1回の帰省で普段より2万~3万円ほど出費が増えることもありました。
それでも由美子さんは、お金を請求したことはありませんでした。
そして今回健太さんが帰省した翌朝、由美子さんの我慢が限界を迎える出来事が起きました。
「友達と出かけるから、駅まで送って」
由美子さんが「今日は買い物にも行きたいから、バスで行って」と答えると、健太さんは不満そうな顔をしました。
「せっかく実家に帰ってきてるのに、それくらいいいじゃん」
その言葉を聞いた瞬間、由美子さんのなかで何かが切れました。
「実家はホテルじゃありません。私はあなたのお世話をするために暮らしているんじゃないの」
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