かつて日本には、高額な所得や納税額を得た人の氏名などを公表する「高額納税者公示制度」がありました。一般に「長者番付」と呼ばれたこの制度は、昭和22(1947)年から平成17(2005)年まで続きました。そこに名を連ねた人々を時代ごとに追っていくと、戦後日本の産業構造や経済の変化が浮かび上がります。石炭会社の経営者、メーカーの社長、土地を売却した「土地長者」、そしてIT関連事業で成功した人々――。今回は、長者番付の変遷から、日本の「お金持ち」の姿がどのように変わってきたのかを見ていきます。
作家や漫画家も登場…「高額所得者」の姿はさらに多様化
長者番付に名を連ねたのは、企業経営者ばかりではありません。
昭和39(1964)年度には、文学・芸術・芸能部門で作家として『徳川家康』がベストセラーとなった山岡荘八氏が1位、漫画家の横山光輝氏が第4位に入っています。
この時代になると、企業経営だけでなく、出版や漫画などの分野で大きな収入を得る人も高額所得者として登場するようになります。
そして高度経済成長の終盤にあたる昭和49(1974)年になると、長者番付には新たなタイプの高額所得者が目立つようになります。
それが、不動産の譲渡によって巨額の所得を得た人々です。
高度成長の末に「土地長者」が登場…バブルへ向かう日本
昭和49年ごろになると、不動産を譲渡したことによって高額所得者となった人が目立つようになります。
戦後の日本では、経済成長と都市化を背景に土地の価値が上昇していきました。こうした土地価格の上昇を背景に、不動産の売却によって一時的に巨額の所得を得る人が現れます。
長者番付の顔ぶれを見ると、経済の中心がどこにあったのかが浮かび上がります。
石炭業界→会社経営者→土地長者
戦後から高度経済成長期にかけて、日本の「お金持ち」の姿は、このように変化していったとみることができます。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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