米国の給付付き税額控除「EITC」…所得や子どもの人数で変わる控除額と適用条件【国際税務の専門家が解説】

米国の給付付き税額控除「EITC」…所得や子どもの人数で変わる控除額と適用条件【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

米国で1975年に導入された勤労所得税額控除(EITC)は、その後の税制改正によって対象者や控除額が拡大し、現在では低所得の勤労者を支援する代表的な給付付き税額控除となっています。EITCの控除額は、所得や家族構成によって異なり、一定の所得水準までは所得が増えるほど控除額も増加します。今回は、EITCの導入後の主な改正経緯を振り返るとともに、2025課税年度の適用要件や具体的な計算例、日本で制度を導入する場合の課題について国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が解説します。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実
矢内一好(著)+ゴールドオンライン(編集)

父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

クリントン政権下でEITCが大幅に拡充

1975年に導入された勤労所得税額控除(EITC)は、その後、米国の税制改革に伴って改正が重ねられてきました。

 

レーガン政権下の1986年には、税制改革法(Tax Reform Act of 1986:TRA1986)が成立し、内国歳入法典の大幅な改正が行われました。この改正によって、EITCの規定は現在の内国歳入法典第32条(米国の連邦税法において、勤労所得税額控除の適用を定められている)に整理されています。

 

その後、1990年、1993年、2001年、2009年などにも制度改正が行われました。特に重要なのが、クリントン政権下の1993年の改正です。

 

当時の米国は、レーガン政権下で貿易赤字と財政赤字という双子の赤字を抱え、ブッシュ政権下では湾岸戦争も発生するなど、財政状況が厳しい状態にありました。こうした状況を引き継いだクリントン政権は、財政再建を重要な政策課題としていました。

 

一方で、低所得の勤労世帯への支援も重視し、その一環として1993年にEITCを大幅に拡充しました。子どものいる世帯を中心に控除額を引き上げ、段階的に制度の規模を拡大したのです。

 

さらに、オバマ政権下の2009年2月17日には、米国復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)が成立しました。同法では、適格児童が3人以上いる世帯に対する控除の拡充などが盛り込まれました。これによって、子どもの人数に応じた支援が強化されたのです。

 

このように、EITCは導入当初の税額控除から、低所得の勤労世帯を幅広く支援する制度へと発展してきました。

EITCの控除額は所得に応じて3段階で変化

現在のEITCは、所得に応じて税額控除額が変化する仕組みになっています。基本的には、次の3段階で構成されています。

 

① 所得の増加に応じて控除額が増える段階

勤労所得が一定水準に達するまでは、所得の増加に応じて税額控除額も増加します。働いて所得を増やすことが、税額控除の増加につながる仕組みです。

 

② 控除額が一定となる段階

所得が一定の範囲にある場合、税額控除額は最大額で維持されます。

 

③ 所得の増加に応じて控除額が減る段階

所得が一定水準を超えると、所得の増加に応じて税額控除額が減少し、最終的にはゼロになります。

 

この3段階の所得基準や控除額は、適格児童の人数によって異なります。子どもが多い世帯ほど、一般的に控除額の上限が高く設定されています。

次ページ2025課税年度におけるEITCの適格要件

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧