(※写真はイメージです/PIXTA)
20年にわたる義父との禍根
「あれだけ無神経に振る舞っておいて、よく平然と来られたものです」
都内のコンサルティング会社で、月収約65万円を得ている雅美さん(46歳)。会社員の夫と中学生の娘の3人暮らしです。仕事では責任ある立場を任され充実した日々を送る一方、結婚以来、義父・忠明さん(74歳)のデリカシーのなさと、不誠実な振る舞いに長年苦しめられてきました。
事の発端は、結婚前の「結納」でした。雅美さんの実父は昔堅気な性格で、娘の門出に際して正式なしきたりに則り、準備を進めていました。ところが両家の顔合わせの席で、忠明さんは「いまの時代、結納なんか形式だけで必要ないでしょう。うちはそういうの、やりませんから」と一方的に突っぱねられたのです。雅美さんは価値観の違いだと理解しつつも、「そんな言い方しなくても」と、この出来事は禍根を残します。
雅美さんの実家は、新生活を応援したいと家具家電の購入費や新居の契約金などまとまった資金を工面してくれました。その援助について忠明さんがあとから知った際、「あっちの家が出してくれるなら、それでいいんじゃないの」といいました。それどころか、雅美さんに対しての「嫁なんだからもっと気を利かせないと、うちでのポイントは稼げないよ!」といった発言は雅美さんを驚かせました。
さらに結婚式当日、雅美さんの我慢は限界に達します。大好きな家族や友人に囲まれて無事に披露宴を終え、幸せな余韻の中で控室に戻った際、顔を出した忠明さんがこう口にしたのです。「雅美さんも、ああいうのを着ると綺麗になるんだねぇ。馬子にも衣装ってやつかな」。身銭を切って娘の晴れ姿を祝福してくれた実父に聞こえる声で、無神経な言葉を投げかけられ、雅美さんは言葉を失いました。
子どもが生まれたあとも、無神経な態度は変わりませんでした。生まれたばかりの赤ちゃんの顔を覗き込むなり「なんだ、お前は二重じゃないのか〜。残念だな」と言い放ったことも。
義父の隣にいる義母も雅美さんにとって同罪でした。義父の理不尽な物言いをたしなめることもなく、「お父さんは悪気があっていってるんじゃないから」と同調するのです。
「お金を出してくれないと怒っているんじゃありません。なぜかうちを下に見るような態度をしてくることに腹が立つんです。暴言も、私の前でだけならいいけれど、両親にも聞こえるようにいってきます。それなのに、週末になれば『孫の顔を見せに遊びに来い』と連絡してくる神経が、本当に気持ち悪くて受け付けませんでした」
雅美さんは夫に何度も改善を訴えましたが、夫は「昔の人間だから」「義理であっても親なんだから大目に見てくれ」と曖昧な態度に終始し、実親を注意することは一度もありません。なにより雅美さんが苦しかったのは、娘の立場を慮って理不尽な無礼を黙って耐えてくれていた実父への申し訳なさでした。
数年前、雅美さんの実父に重い病気が見つかり、長期の入院と療養が必要になりました。心身ともに衰弱していく父と疲弊する母を支えようと雅美さんが実家に通い詰めていた際、義父が放った言葉を雅美さんは一生忘れることができません。
「長引かせても医療費の無駄だろうに」
雅美さんは激しい怒りを覚え、夫に「二度とあの人たちと関わりたくない」と泣き叫びました。さすがの夫も「親父がすまない」と謝ってくれましたが、雅美さんの気持ちは収まりません。病床の実父は、そんな義実家の無礼を知りながらも、「雅美、向こうの親御さんとは波風を立てずにうまくやりなさい」と、最期まで娘の立場を案じて耐えてくれていました。
そしてその1ヵ月後、実父は静かに息を引き取ります。
知らせを聞いて駆けつけた親族が涙に暮れる通夜の席に、忠明さんと義母は何食わぬ顔で現れました。生前、父がどれほど義実家の無礼に耐え、娘の家庭を思って身銭を切ってくれていたかを知る雅美さんは、神妙な顔をして親族席に座る義父母を見た瞬間、震えが止まらなかったと振り返ります。
「義父の姿を見た瞬間、胃の底からせり上がるような強烈な吐き気に襲われました。『どのツラさげてここに来たんだ』と、怒りで手が震えました」
葬儀が終わったあと、雅美さんは夫に対し、義両親との完全な絶縁を言い渡しました。夫がそれを拒むのであれば、離婚して息子と2人で生きていく覚悟を決めていると、雅美さんは覚悟を口にしています。