子どもの将来を願い、教育費を惜しまない親は多くいます。しかし「子の成功=老後の安泰」と信じ込むと、思わぬ落とし穴に直面することもあります。優秀な愛息に老後を託そうとした父親が、久しぶりの帰省で突きつけられた予想外の宣告とは何だったのか。ある家族の事例から、親自身の老後生活と教育投資の現実を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「息子は東大なので安心です」〈年金月10万円〉老後をエリートの愛息に託した65歳父、1年ぶりの帰省で告げられた「衝撃のひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「息子は東大だから」老後の不安を打ち消してきた65歳父

「うちは息子が東大ですから。将来の心配はしていませんよ」

 

そう話すのは、地方都市で暮らす小林浩さん(65歳・仮名)です。妻の由美子さん(63歳・仮名)と2人暮らし。現在の年金収入は夫婦合わせて月約15万円。浩さん自身の年金は月10万円ほどです。

 

決して余裕のある家計ではありません。それでも浩さんには、老後について一つの期待がありました。東京大学に通う一人息子の存在です。

 

浩さんは若いころ、会社員として働いていました。しかし、40代を前に自分の夢だった飲食店を開業するため、勤め先を退職。貯蓄を取り崩して店を始めました。

 

ところが、経営は思うようにいきません。数年で店を閉め、再び会社員として働き始めました。自営業だった期間は厚生年金に加入していなかったため、老後に受け取れる年金額にも影響が出ました。

 

厚生労働省の令和6年度の資料によると、厚生年金受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて約17万9,000円です。ただし、これは受給者全体の平均であり、現役時代の加入期間や報酬によって金額は異なります。

 

会社員を離れて国民年金に加入していた期間が長ければ、厚生年金の上乗せ部分は少なくなります。

 

浩さんも、店を畳んだ後に会社員へ戻ったものの、長年勤め続けた人と同じ水準の年金を受け取れるわけではありませんでした。

 

それでも、息子の教育にはできる限りお金をかけました。

 

「自分は店を失敗しましたが、息子には同じような苦労をさせたくなかった。勉強ができる子だったので、塾にも通わせましたし、進学に必要なお金は惜しみませんでした」

 

息子は地元の進学校から東京大学に合格。上京後は生活費や学費の一部を親が負担してきました。浩さんにとって、それは大きな喜びでした。

 

息子が優秀な大学に進んだことで、将来は大企業や専門職に就き、安定した収入を得るだろう。そうなれば、自分たちの老後も何とかなる。浩さんは、そんな期待を抱くようになっていました。

 

実際、浩さんは友人との会話でも、息子の大学名を口にすることが少なくありませんでした。

 

「息子がしっかり稼ぐようになれば、いずれは助けてもらえるでしょう。親も頑張ったんだから」

 

口には出さなくても、親が子どもにかけたお金や時間が、将来の支えとなって返ってくる。そんな考えがあったのです。