「そんな言い方しなくても…」食卓で繰り返された母のひと言
73歳の節子さん(仮名)は、同い年の夫・敏夫さん(仮名)と2人暮らし。夫婦の年金収入は合わせて月約18万円で、住宅ローンを完済した自宅に住んでいます。
一人息子の和也さん(44歳・仮名)は、妻と小学4年生の娘との3人暮らし。車で30分ほどの場所に住んでいます。
節子さん夫婦が楽しみにしていたのは、月に2回ほど開く日曜日の夕食会でした。
「孫が小さい頃から続けていたんです。みんなでご飯を食べるのが、私たち夫婦の楽しみでした」
料理を担当するのは節子さん。和也さん一家が来る日は、孫の好きな唐揚げや煮物などを用意して待っていました。
ところが、最近は食事中の会話がぎこちなくなることが増えていたそうです。きっかけは、節子さんが息子の妻にかける言葉でした。
「最近、外食が多いんじゃない?」「子どもの食事は、もう少し気をつけたほうがいいわよ」
節子さんは心配して言っているつもりでしたが、和也さんの妻は「そうですね」と答えるだけで、以前ほど会話に加わらなくなっていました。
「お嫁さんは仕事もしているので、忙しいのはわかっていました。でも、孫の健康が気になって、つい口を出してしまったんです」
ある日曜日、いつものように夕食を囲んでいたときのことです。孫が「昨日、みんなでハンバーガーを食べに行ったんだ」と楽しそうに話しました。
すると、節子さんは何気なく言いました。
「また外食? お母さん、ちゃんとご飯作ってくれてる?」
食卓が静かになりました。和也さんの妻は笑顔を作ろうとしましたが、何も答えません。
その様子を見た和也さんが、節子さんに言いました。
「母さん、そういう言い方、やめてくれない?」
節子さんは驚きました。
「そんなに怒らなくてもいいでしょう。心配しているだけなのに」
和也さんは、これまで何度も同じようなことを言われてきたと説明しました。
「妻だって仕事をしながら頑張ってるんだよ。毎回ここに来るたびに、責められるのはつらいんだ」
節子さんが「親なんだから、少しくらい言ってもいいでしょう」と返すと、和也さんの表情が変わりました。
「親子だからって、何でも許されると思わないで」
思いがけない言葉に、節子さんは何も言えなくなりました。その日は食事を早めに切り上げ、和也さん一家は帰っていきました。
