43歳店長、面接にやってきた簿記1級の元部長に喜んだが…
地方都市のマンションで妻と二人暮らしをしている佐藤正弘さん(60歳)は、長年勤めた大手企業を定年退職しました。
退職前は経理部長を務め、当時の年収は約1,200万円。部下を抱え、会社の財務管理や経営計画にも関わってきました。会社からは再雇用の話もありましたが、提示された年収は500万円にも満たない程度。「これまでと同じように毎日8時間も会社に拘束されて、給料は半分以下じゃないか……」。役職も外れて仕事内容も変わることもあり、正弘さんは再雇用を断ることに。
幸い、住んでいるマンションの住宅ローンは完済しており、金融資産は4,000万円以上。以前の勤務先の株式も保有しており、配当収入だけで年間50万円ほどありました。妻の収入や今後の年金も考えれば、すぐに生活に困る状況ではありません。
そこで考えたのが、中小企業の財務のアドバイスや経理代行の仕事をすることでした。正弘さんは日商簿記1級を取得しており、経理や財務に関する知識には自信があったからです。
ところが開業したものの、大企業で長年勤務していたとはいっても、地元の中小企業経営者との人脈はほとんどありません。ホームページを作り、知人にも声をかけましたが、問い合わせはほとんどなく、売上もほぼゼロの状態が続きます。
「まあ、急ぐ必要もない。少しずつ顧客を増やしていけばいいだろう」
そう切り替えた正弘さんは、空いている時間にアルバイトをすることにしました。選んだのは自宅近くのホームセンターです。もともと体を動かすことが好きで、40代のころから運動を欠かさず続け、年齢の割には体力にも自信があります。商品の搬入や売り場への補充など、力仕事が中心の募集でしたが、希望する曜日や時間帯で働けることが魅力でした。
面接を担当したのは、店長の中村健太さん(仮名/43歳)です。年収約400万円の店長は、売上管理や人員配置、クレーム対応など、毎日忙しく働いていました。体力が必要な仕事である商品の搬入や補充は、なかなか人が集まらず苦悩していたため、正弘さんの履歴書には驚いたそうです。
「簿記1級もお持ちなんですね。そんな方が、うちで働いてくださるんですか?」
体力があり、経理や管理職として豊富な経験を持つからの応募に、中村店長は「ぜひ明日からでもお願いしたい」と快諾。こうして正弘さんは、3ヵ月間の有期雇用契約で新たなスタートを切ることになりました。
