「生活費です」だけでは説明にならない
夫婦や親子など、扶養義務者の間で通常必要となる生活費や教育費を、その都度負担した場合、原則として贈与税はかからない。
入院費を家族が支払った場合や、親が子どもの学費を学校へ直接支払った場合などが典型である。
ただし、「親子間のお金であれば、すべて生活費として非課税になる」というわけではない。
生活費の名目で渡されたお金が預金として残っている場合や、株式、不動産、自動車などの購入に使われた場合には、通常必要な生活費とは認められないことがある。
孫への小遣いや祝い金も、社会通念上相当な金額であれば直ちに贈与税の問題になるわけではない。
一方で、毎月数十万円を継続して渡していたとなれば、「一般的な小遣いだった」という説明だけで納得を得るのは難しい。
現金支出について重要なのは、金額に見合う使途を、客観的な資料や具体的な説明によって示せるかどうかである。
高田家の場合、医療費や自宅の修繕費など、使途を説明できた部分もあった。
しかし、預金から引き出された金額と、確認できた支出との差額は大きかった。
調査の結果、その一部は子どもや孫に対する贈与と判断された。
また、贈与されたとは認められず、高田社長が管理したまま死亡時まで保有していたと判断された現金や名義預金もあった。
「7年間遡る」の本当の意味
ここで注意したいのが、税務調査でよく聞く「7年間遡る」という表現である。
贈与税について税務署が課税処分を行える期間は、通常、法定申告期限から6年である。
ただし、偽りその他不正の行為によって税を免れたと認定された場合には、7年まで延びる可能性がある。
単に申告を忘れていただけで、必ず7年間遡られるわけではない。現金で渡したことだけを理由に、直ちに不正と判断されるものでもない。
贈与の事実を意図的に隠したのか、虚偽の説明をしたのかなど、具体的な事情に基づいて判断される。
なお、2024年から、相続税の計算上、生前贈与を相続財産へ加算する期間が、従来の3年から最長7年へ延長される制度が始まった。
ただし、これは段階的に延長される。
2026年12月31日までに発生した相続については、暦年課税による生前贈与の加算期間は原則として相続開始前3年以内である。
「贈与税の課税処分を行える期間」と「相続税に生前贈与を加算する期間」は別の制度であり、同じ「7年」でも意味が異なる。
