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地元で有名な「大繁盛レストラン」、経営者は引退を視野に…
「息子からは〈店は継がない〉と断言されました…」
そう言って肩を落とすのは、地方で飲食店を営む64歳のオーナー、勝田正弘氏(仮名)だった。
勝田氏の店は、地方の閑静な住宅街に位置する人気店で、予約困難な有名イタリアンレストラン。常連客も多く、週末にはほとんど満席となり、顧問税理士に勧められて法人化した経緯があるほど、経営は順調だった。
しかし、60代という年齢もあり、勝田氏はそろそろ引退を考え始めていた。
みんなやっているから…長年続けてきた「ある行為」
勝田氏の店は繁盛していたが、決算書上の利益はそれほど多くなかった。
理由はシンプルだ。自宅の家賃や飲食費、私用の消耗品など、店とは直接関係ない出費も経費計上していたうえ、現金売上の一部を計上していなかったのである。
勝田氏はそれを「調整」と説明したが、売上の一部を計上しないというのは、完全なる脱税行為である。
勝田氏は言う。
「多額の税金を払いたくないから、多少〈調整〉をしていました」
「お客さんもみんな、酒が入ると言うんですよ。〈まともに申告するなんてもったいない〉って…」
「飲食店は多かれ少なかれ、みんなそんなもんでしょう?」
銀行から借りる必要もなく、長年そのやり方で問題なくやってこられたため、深く考えることはなかったという。
大手卸売商社に勤務する息子の一言
勝田氏には32歳のひとり息子、隆(仮名)がいた。飲食関連材料の大手卸売商社に勤務し、店と取引もあったため、勝田氏は「いずれ店を継いでくれるだろう」と楽観的に考えていた。
ある日勝田氏は、隆が帰郷したタイミングで事業承継について切り出した。
「隆、店を継ぐ気はないか? お父さんはもう年を取った。今より休みは減るかもしれないが、店は繁盛しているから手取りは相当増えるだろう。今ならお父さんがノウハウを引き継いでやれるぞ」
すぐ乗り気になると思っていた隆の返答は、想定と違っていた。
「この状態のままでは継げないよ」
理由は明確だった。
「売上も経費も、どれが本当の数字なのか判別できない」
つまり、店の決算書を見ても〈本当の利益〉がわからないことを問題視したのである。
大手商社に勤務する隆は、コンプライアンス意識も高かった。
「このまま引き継げば税務上のリスクもあるし、〈実際には儲かっていなかった〉こともあり得る。そこから元の会社員には戻れない」
そう言うと、承継を断ったのである。
