貸金庫、お持ちですよね?…税務調査官が拾い上げた紙片から、オーナー社長の相続税の追徴「約4,600万円」が発生した、まさかの理由【税理士が解説】

貸金庫、お持ちですよね?…税務調査官が拾い上げた紙片から、オーナー社長の相続税の追徴「約4,600万円」が発生した、まさかの理由【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

資産家の相続の場合、相続手続きが複雑になるケースは珍しくない。相続人がすべて把握しているつもりでも、実際には確認が漏れていたり、思わぬところからお金の流れが発覚したりすることもある。一方で「これぐらいわからないだろう」と高をくくったことで、手痛いしっぺ返しを受けることも…。税理士の都鍾洵(みやこ しょうじゅん)氏が、事例をもとに富裕層の税務調査の実態を解説する。

相続税申告は「問題なく終わる」はずだった

高田社長は、自社株式のほか、複数の土地や賃貸不動産、預貯金などを保有していた。

 

相続税が発生することは、家族も以前から理解していた。

 

幸い、会社と個人の申告を担当する顧問税理士は、高田社長が保有する不動産や預貯金の概要を把握していた。

 

「不動産の評価には少し時間がかかりますが、財産の所在は概ね分かっています。申告自体は比較的スムーズに進められると思います」

 

税理士からそう聞き、里子さんは胸をなでおろしていた。

 

ただし、1つだけ説明のつかないことがあった。

 

高田社長名義の預金口座から、亡くなる約5年前から毎月のように60万円が現金で引き出されていたのである。

 

金額や日付は完全に同じではなかったが、多くの月で、50万円から70万円程度がATMや銀行窓口から払い戻されていた。

 

5年間で、その総額は5,000万円を超えていた。

 

税理士は里子さんに尋ねた。

 

「この現金は、何に使われたのでしょうか?」

「生活費です。主人の入院費や治療費もありましたし、孫にお小遣いを渡すこともありました。現金で払うことが多い人でしたから」

 

確かに、高田家は一般家庭よりも生活費が多かった。

 

親戚を集めて食事をすることも多く、孫の入学や進学のたびに祝い金を渡していた。病院への支払いや自宅の修繕費など、まとまった支出もあった。

 

領収書がすべて残っているわけではない。

 

それでも税理士は、確認できた医療費や生活費を整理し、残額について何度も質問した。

 

「すべて生活費だった、ということで間違いございませんか?」

「はい。そうだと思います」

 

最終的に、税理士は里子さんの説明に基づいて相続税申告書を作成した。

 

しかし、現金の使途に関する疑問が、完全に消えたわけではなかった。

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