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70歳目前の船舶部品製造会社社長、従業員の行く末を憂慮
「そんなこと……まかり通るのか!?」
九州北部で船舶部品製造会社を営む熊田社長(仮名)は、手にしていた契約書を机の上に置き、思わず声を上げた。
創業から40年、従業員は約35名。熊田社長の会社は、船舶用の配管部品を製造し、地域の造船会社や機械商社へ納品してきた。
補助金もうまく活用して最新の機械に入れ替え、さらに熟練工による加工技術には定評があり、業績も安定していた。
しかし、熊田社長はすでに70歳を目前にしている。子どもたちは県外でそれぞれの仕事に就いており、会社を継ぐ意思はなかった。
「従業員の雇用と取引先との関係を守りたい」
そう考えた熊田社長は、第三者への事業承継、いわゆるM&Aを検討し始めた。
「十分に可能性があります」胸を張るM&A仲介会社の担当者
そんな折、テレビCMで見たことのあるM&A仲介会社からDMが来たことで、問い合わせたところ、ほどなく担当者が訪ねてきた。
担当者は、熊田社長の会社の決算書や事業内容を確認したうえで、こう説明した。
「造船関連の技術を持つ会社は、買い手企業からの関心も高いです」
「御社のように長年の取引実績がある会社なら、十分に可能性があります」
「まずは仲介契約を結び、買い手候補を探していきましょう」
説明は自信に満ちていた。
熊田社長も「ここに任せれば何とかなるかもしれない」と期待した。
渡された仲介契約書は10ページ近くあったが「一般的な内容」という言葉を信じ、細かな内容までは確認しなかった。
担当者から重要事項についてひと通り説明を受けたつもりだったからである。何より、1日でも早く相手先を探してほしかったのも本音である。
熊田社長は、その場で契約書に署名した。
