「同居解消」は親不孝ではない。共倒れを防ぐためには?
翌週、Bさんは実家から車で15分ほど離れた場所に、1LDKの賃貸マンションを借りました。強行突破で実家を出て、別居生活をスタートさせたのです。
最初は猛烈な罪悪感に襲われました。「近所から冷たい娘だと思われるのではないか」「一人で住ませて何かあったらどうしよう」。夜、一人で過ごす部屋で涙を流すこともありました。
しかし、Bさんはただ放置したわけではありません。地域包括支援センターに相談し、区分変更申請を行って「要介護1」の認定を受けました。そして、適切な母のケア体制を構築していったのです。
・週2回のデイサービス導入(他者との交流で母の孤立感を軽減)
・見守りカメラとスマートロックの設置(遠隔から安全を確認)
・訪問介護・宅配弁当の利用(Bさんの家事負担を大幅カット)
これらは合計しても月3万5000円程度におさまり、新居の家賃も地方であることもあり、安く抑えられました。距離を置き、「やるべきことはやった」という思いから、Bさんは仕事に集中できるようになり、睡眠時間も確保できるようになりました。
別居から半年、現在、Bさんは毎週日曜日の午後だけ、実家を訪れる生活を送っています。
最初は不満を漏らしていた母も、デイサービスで友人ができたことで表情が柔らかくなり、Bさんが訪れると「いつもありがとうね」と笑顔で迎え入れてくれるようになりました。
「同居していたときは、母の顔を見るだけで胃がキリキリしていました。でも、距離を置いたことで、ようやく『優しく接することができる娘』に戻れた気がします」
内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によると、かつて昭和55年には高齢者のいる世帯の過半数(50.1%)を占めていた「三世代同居」は、令和5年にはわずか7.0%と激減しました。代わって主流となったのが、高齢者の「単独世帯(31.7%)」や「夫婦のみの世帯(32.0%)」です。
65歳以上の一人暮らしの割合も年々増え続けており、もはや「親が老いたら同居して支える」というスタイルは、社会のマイノリティになりつつあります。
高齢者の暮らし方が一人暮らしや夫婦のみへと変化するなかで、親子の支え合い方も「同居して面倒を見る」一択から、「別居しながら見守りサービスや介護保険を活用して遠隔で支える」という柔軟で多様な形へシフトしているのです。
親を大切に想うからこそ、「同居一択」という固定観念に縛られず、共倒れリスクを回避することが重要です。時には「適切な距離をとる」ことが、互いの人生と関係性を守るための、「誠実さ」なのかもしれません。
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