「今月もお願いできる?」4年近く続いた月3万円の援助
「お母さん、今月も3万円、お願いできる?」
娘の美咲さん(仮名・44歳)から初めてそう頼まれたのは、上の孫が中学生になったころでした。
節子さん(仮名・73歳)は夫を8年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約14万円、預貯金は約1,200万円あります。住宅ローンを完済したマンションに住んでいるため家賃はかかりませんが、管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担はあります。
美咲さんは夫と2人の子どもとの4人暮らし。共働きではあるものの、住宅ローンを抱えながら教育費を捻出しており、上の子が塾へ通い始めたことで家計が苦しくなったといいます。
「受験が終わるまで、少し助けてもらえないかな」
かわいい孫のためならと、節子さんは月3万円を援助することにしました。「塾に行きたいのに、お金のせいで諦めさせるのはかわいそう」という思いもありました。
当初は受験までのつもりでしたが、高校へ進学すると教材費や部活動の費用がかかり、今度は下の孫も塾へ通い始めます。結局、「塾代」として始まった月3万円は、その後も孫たちの教育費を補う形で続いていきました。
年間にすると36万円です。
年金月14万円の節子さんにとって、決して気軽に出せる金額ではありません。それでも年金が入れば先に3万円を取り分け、残ったお金で自分の生活をやりくりすることが当たり前になっていきました。
友人から旅行に誘われても、「今月はいろいろあるから」と断る。少し欲しいものがあっても、「まだ使えるから」と買い替えを先送りする。月によって生活費が足りなければ、預貯金から補っていました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%となっています。70~74歳でも22.9%が何らかの形で子や孫の生活費を負担しています。
節子さん自身も長い間、「自分がしたくてしていること」だと考えていました。
そんな気持ちが揺らいだのは、今年の春。久しぶりに会った友人から、秋に2泊で温泉へ行こうと誘われたときのことです。
「行きたいけど、孫にお金がかかるから今回はやめておく」
すると友人から、「まだ毎月出しているの?」と聞かれました。
その一言が、帰宅してからも頭に残りました。
通帳を開き、娘への振り込みをさかのぼってみると、援助を始めてからすでに4年近く。単純計算でも総額は140万円を超えます。
節子さんはそこで初めて、「私はいつまでこの3万円を出すつもりなんだろう」と考えました。
