(※写真はイメージです/PIXTA)

親が年金生活に入ると、子どもが生活費を援助する家庭もあります。ただ、毎月どの程度のお金が必要なのか、その使い道まで共有しているとは限りません。「足りないなら」と渡し続けていたお金が、想定していなかった用途に使われていることもあります。

「5万円あれば何とかなる」母に送金を始めて3年

「お母さん、今月も足りないの?」

 

健司さん(仮名・52歳)がそう尋ねると、母の文子さん(仮名・79歳)は決まって「ごめんね。助かるよ」と答えました。

 

文子さんは地方都市の持ち家で一人暮らしをしています。夫は8年前に他界。住宅ローンはありませんが、受け取っている年金は月約12万円です。

 

3年前、文子さんから健司さんに電話がありました。

 

「電気代も食べ物も高くなったでしょう。年金だけだと少し厳しくて」

 

当時、健司さんは母の通帳や家計を細かく確認しませんでした。

 

自身は会社員で、妻も働いています。大学生の子どもが1人いるものの、「月5万円なら何とかできる」と考え、毎月母の口座へ振り込むようになりました。

 

年にすると60万円です。母がエアコンを買い替えた月などには、別に数万円を渡したこともありました。

 

「母は昔から質素でした。ブランド品を買うような人でもないし、お酒も飲まない。年金が12万円なら、5万円くらい足さないと厳しいのだろうと思っていたんです」

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均の消費支出は14万8,445円、可処分所得は11万8,465円。平均でみても、収入だけでは日々の支出を賄いきれない高齢単身世帯があることが分かります。

 

そのため、年金月12万円の母から「足りない」と言われても、健司さんには不自然には感じられませんでした。

 

ところがある休日、出張で近くまで行った健司さんは、連絡せず実家へ寄りました。

 

母は驚きながらも家に招き入れてくれました。

 

居間は以前と変わりません。高価な家具が増えた様子もなく、冷蔵庫の中も質素でした。

 

「ちゃんと食べてる?」

 

そう言いながらテーブルを見ると、銀行の封筒と振込明細が置かれていました。振込先には、妹・真紀さん(仮名・48歳)の名前がありました。

 

金額は3万円。日付を変えた同じ明細が何枚も重なっていました。

 

「これ、何?」

 

健司さんが尋ねると、文子さんはしばらく黙った後、「真紀に毎月少し送ってるの」と答えました。

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