「要介護じゃない」からこそ訪れる、底なしの疲弊…
しかし、同居を始めて突きつけられたのは、思い描いていた「親孝行な日常」とはかけ離れた絶望的な現実でした。
Bさんのお母さんは、要介護認定を受けるほど明確な認知症や身体障害があるわけではありません。行政の認定調査では「自立(非該当)」または「要支援1」程度と判定され、表向きはしっかり会話ができます。しかし、二人きりの生活空間に入ると、母の精神的な依存と不安定さが、Bさんに襲いかかります。
朝は母の薬の確認と朝食の支度、出勤直前までの愚痴の聞き相手。夜、へとへとになって帰宅すると、母は暗い部屋で一人泣いており、そこから深夜まで「勘ぐりのループ」が始まります。
「今日、近所の人に冷たくされた」
「あなたが仕事ばかりで、私は放置されている」
「この家にある私の通帳、あなたがどこかに隠したでしょう」
疑心暗鬼と被害妄想に苛まれる母。Bさんが必死に「そんなことないよ」「通帳はここにあるよ」と説明しますが、母の不安は解消されず、毎晩のように押し問答が続きました。
さらに家計の面でも想定外の事態が次々と発生します。母の年金15万円でおさまるはずだった生活費ですが、認知機能の低下に伴い、母はテレビ通販で「飲めば足腰が良くなる」という高額なサプリメントや健康食品を次々と定期購入。注意しても、「あんたにこれ以上、迷惑かけたくないのよ!」と聞き入れません。
「私がいることで、生活費には困らないという甘えもあったのでしょうね。明確に母のお金遣いは荒くなっていました」
「家に食べ物がない」という強い不安から、同じ食材を毎日大量に買い込んでは、冷蔵庫で腐らせることを繰り返しました。エアコンのつけっぱなしによる電気代の高騰、ちょっとした移動での往復タクシー利用、さらには「鍵を失くした」とパニックになり呼んだ緊急鍵開け業者への支払いなどなど……気がつけばBさんの口座から、毎月5万円以上の持ち出しが当たり前になっていたのです。
「心も財布もどんどん擦り減っていく……」
休日も母の通院の付き添いや家事で潰れ、Bさんのプライベートな時間は完全に消滅しました。
