両親がいなくなり1人に…地方から東京への「逆移住」を決断
「両親を亡くしてから、急に家が広く感じるようになったんですよね」
そう話すのは、緑豊かな地方都市で暮らしてきた斎木さん(68歳・仮名)。独身で、結婚歴はありません。高校卒業後から地元の会社に勤め、定年まで働きました。
ずっと両親と同居していたため、仕事を終えて家に帰れば親がいる生活が当たり前だったといいます。
ところが60代に入り、父親、母親と相次いで亡くなりました。もともと社交的な性格でもなく、頻繁に会う友人も多くありません。定年退職して、仕事を通して人と話す機会もなくなりました。
「家に帰っても誰もいない。この家に、この町に、一人で住み続ける意味ってあるのかなって思ったんです」
そこで頭をよぎったのが、東京への移住でした。
「東京なら、一人でも退屈しないんじゃないかって」
一度は東京に住んでみたい。若い頃から、そんな思いを密かに抱いていたという斎木さん。両親が亡くなり、仕事も終えた今なら、自分で住む場所を決められる。しばらく考えた末に、実家を手放すことにしました。
築年数の古い一戸建てでしたが、諸費用などを差し引いて約1,700万円が手元に残りました。公的年金は月13万円ほど。自分自身で貯めていた貯金も1,000万円ほどありました。
東京は家賃が高いと思っていましたが、意外と選択肢は多かったといいます。年齢を理由に断られるケースもありましたが、最終的に見つけたのは、下町の駅から徒歩10分ほどの1K。家賃は月7万8,000円です。
「実家と比べたら狭いですよ。でも一人だから十分。掃除も楽だし、庭の手入れもしなくていい」
それ以上に気に入っているのが、家の外に出たときの環境です。駅前にはスーパーや飲食店があり、電車に乗れば大きな映画館や図書館、美術館にも行ける。公園など無料で過ごせる場所も豊富です。
「田舎だと何かしようと思ったら車が必要だし、行くところもそんなにない。東京なら、今日は暇だなと思ったら図書館に行ってもいいし、映画を観てもいい。選択肢が多くていくらでも時間を潰せるんです」
