日本の中小企業にも通じる教訓
今回の事例は、巨額投資を行う米ビッグテックだけの問題ではない。日本の中小企業でも、設備投資や長期契約を結ぶ場面は少なくない。
貝井氏は、「決算書に載っている借入金だけを見て資金繰りを判断してはいけない」と指摘する。
「機械設備の購入契約、店舗や工場の長期賃貸借契約、最低購入数量を定めた仕入契約、システムの長期利用契約などは、まだ会計上の負債として計上されていなくても、将来の資金繰りを拘束する可能性があります」
こうした契約は特殊なものではなく、事業を行う以上、将来の需要を見込んで設備や商品を発注することは通常の経営判断である。
重要なのは、その需要予測が外れた場合でも会社が耐えられるかどうかだという。大規模な設備投資を行う際には、売上が計画を下回った場合や設備の稼働開始が遅れた場合、設備が早期に陳腐化した場合なども想定し、資金繰りをシミュレーションしておく必要がありそうだ。
また、金融機関に対しては、決算書に表れない契約上の支払義務についても、契約金額や支払時期、解約条件などを一覧で管理し、説明できる体制を整えることが望ましいという。
「見えない債務」の本質は将来予測への賭け?
AI投資を巡る今回の「簿外債務」は、企業が債務を隠していることを意味するものではない。
しかし、AI市場の拡大を前提に結んだ巨額の契約は、需要予測が外れた場合には企業財務へ大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。
AI投資競争は今後も続くとみられるが、市場が注目すべきなのは、貸借対照表に表れない契約の存在そのものではなく、その契約から十分な収益を生み出せるかどうかである。
「見えない債務」の本質とは、会計上の問題ではなく、将来の成長を見込んだ経営判断が適切だったのかが、数年後に問われる点にある。今回の報道は、AI時代の企業価値を評価するうえで、貸借対照表の数字だけでは見えないリスクにも目を向ける必要性を改めて示したと言えそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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