(※画像はイメージです/PIXTA)

クリニックの事業承継は多くの開業医にとって避けて通れない課題となっています。しかし、医業承継は一般企業の事業承継とは異なり、患者との信頼関係や医療機器、不動産、許認可など、多くの要素を考慮しなければなりません。さらに、個人診療所と医療法人では承継の仕組みや税務上の取り扱いが大きく異なります。本記事では、それぞれの承継スキームの違いやメリット・デメリット、実務上の注意点を整理し、円滑な医業承継を実現するためのポイントを公認会計士の岸田康雄氏が解説します。

承継に向けた3つのステップ

承継を成功に導くために、今すぐ着手すべき3つのステップを提示します。

 

ステップ1:現状の棚卸しと資産・負債の可視化

まずは「何を、誰に、どう渡すのか」を明確にしてください。

 

目に見える不動産や設備だけでなく、リース契約、保守契約、雇用契約の内容、さらには借入金の保証状況まで、承継すべき「荷物」をすべて洗い出します。特に医療法人の場合は、現在の持分評価額を試算し、「見えない税金」を顕在化させることが第一歩です。

 

ステップ2:患者・スタッフ・金融機関の「導線設計」

「診療ができる後継者を置く」だけでは承継は不十分です。

 

後継者が就任した後も、患者が定着し、スタッフが働き続け、金融機関からの融資が維持されるか。この「4つの要素」を維持するための具体的なタイムスケジュールと導線を設計してください。個人診療所であれば、廃業と開業の空白時間をゼロにするための精密な届出計画が必須です。

 

ステップ3:期限からの逆算による意思決定

特に「個人版事業承継税制」の活用を視野に入れる場合、残された時間は長くありません。

 

2028年の期限は絶対です。承継は放置していても解決せず、むしろ現院長の健康状態や、近隣への競合クリニックの出現といった「外的要因」によって、選択肢は刻一刻と狭まっていきます。期限から逆算し、今この瞬間に最初の一歩を踏み出す勇気が必要です。

次ページ医業承継は「制度」の理解と「段取り」の勝負

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