(※画像はイメージです/PIXTA)

クリニックの事業承継は多くの開業医にとって避けて通れない課題となっています。しかし、医業承継は一般企業の事業承継とは異なり、患者との信頼関係や医療機器、不動産、許認可など、多くの要素を考慮しなければなりません。さらに、個人診療所と医療法人では承継の仕組みや税務上の取り扱いが大きく異なります。本記事では、それぞれの承継スキームの違いやメリット・デメリット、実務上の注意点を整理し、円滑な医業承継を実現するためのポイントを公認会計士の岸田康雄氏が解説します。

個人版事業承継税制という「強力な武器」

個人診療所の承継には、実務の煩雑さというデメリットがある一方で、それを補って余りある強力なメリットが存在します。それが「個人版事業承継税制」です。

 

制度の概要

この制度は、一定の条件を満たすことで、後継者が負担すべき贈与税・相続税の全額が納税猶予され、最終的には実質的に税負担がゼロになり得るという、極めてインパクトの強い優遇措置です。

 

医業承継における最大の懸念事項である「納税資金の確保」という問題を解決する、まさに「強力な武器」と言えるでしょう。

 

適用対象の明示

この税制が適用される「特定事業用資産」には、診療継続に不可欠な以下の資産が含まれます。

 

●    土地:400㎡まで
●    建物:800㎡まで
●    設備等:診療機器、備品、車両などの医業用資産

期限の強調:迫りくる「2028年の壁」

本制度を利用する上で、経営者が最も警戒すべきは「期限」です。これは永続的な制度ではなく、厳格なタイムリミットが設定された時限措置です。

 

●    承継計画の提出期限:2028年(令和10年)9月末まで
●    制度の実施(贈与・相続)期限:2028年(令和10年)12月末まで

 

計画の策定から都道府県庁への提出、そして実際の認定までには相応の時間を要します。2028年という数字は、単なる未来の予定ではなく、今すぐに意思決定を開始しなければ間に合わない「デッドライン」として認識すべきです。

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