必要に応じて「飲みニケーション」も必要…金融機関にも仲介業にもできない、「事業承継支援者」に求められる“ソフトな伴走力”とは

必要に応じて「飲みニケーション」も必要…金融機関にも仲介業にもできない、「事業承継支援者」に求められる“ソフトな伴走力”とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢化や後継者不足を背景に、日本では「廃業」を選ぶ企業が増えています。「廃業」にはネガティブな印象を持つ人も多いと思いますが、必ずしも「悪」ではありません。事業承継の現場では、将来性や業界構造を踏まえ、あえて廃業を選ぶことが合理的な場合もあります。本稿では、「事業承継支援者」へ向けて、事業承継支援者に求められる役割を整理して解説します。

急増するM&Aの陰で顕在化するトラブルを防ぐために

近年、第三者承継(M&A)が急増していますが、同時にトラブルも目立つようになってきました。これからの支援者には、不適切な仲介を防ぎ、PMI(M&A後の統合プロセス)への深い関与が求められます。

 

不適切な仲介から経営者を守る

M&A仲介業者のなかには、手数料収入を優先し、譲渡後の経営破綻リスクを十分に考慮しないままマッチングを進めるケースも見受けられます。

 

支援者は、経営者の“防波堤”として、セカンドオピニオンを提供すべき立場です。契約書の表明保証や補償条項、手数料体系(レーマン方式など)が依頼者に不利になっていないかを確認し、納得して意思決定できるよう支援しなければなりません。

 

「中小M&A支援機関」への登録を行い、倫理規定を遵守しながら、顧客利益の最大化に努めることが我々の責務です。

 

PMI(経営統合)こそが成功のカギ

また、M&Aは、成約(クロージング)がゴールではありません。M&Aの成否は、その後のPMIにかかっています。PMIには、「経営統合」「信頼関係構築」「業務統合」の3つの領域があります。

 

特に中小企業のM&Aでは、異なる企業文化の衝突や、従業員の離反が命取りになります。システムや人事制度の統合だけでなく、譲受側と譲渡側の従業員が安心して働ける環境を整え、シナジー効果(売上シナジー・コストシナジー)を発揮できる体制を構築することが不可欠です。

 

PMIは一朝一夕にできるものではなく、1年以上を要するケースも珍しくありません。ここで活きてくるのが「経営力再構築伴走支援モデル」です。「経営力再構築伴走支援モデル」とは、支援者が経営者と継続的に対話しながら、課題の整理から実行までを長期的に支える支援手法のこと。

 

課題解決型の単発支援ではなく、経営者との対話を通じて本質的な課題を設定し、腹落ちさせ、自走できる状態へ導く……この長期的な伴走支援を行えるのは、仲介業者ではなく、日頃から経営者と信頼関係を築いている地域の支援者だけです。

 

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の視点を取り入れた業務統合支援も、今後、我々に期待される大きな役割になるでしょう。

事業承継支援者の“使命”

「事業承継支援」とは、単なる手続きの代行ではありません。先代経営者の「想い」と、長年培われた「経営資源」というバトンを、必要に応じて形を変えながら次世代へつなぎ、日本経済の活力を支える崇高なミッションです。

 

支援者の役割は、以下の4点に集約されます。

 

1.前半戦の主導権を握る

……税務・法務の前に、事業性評価と人生相談を通じて“気づき”を促す

 

2.対話を重視する

……飲みニケーションも含め、経営者の心に寄り添い、知的資産を可視化する

 

3.柔軟な承継形態を提案する

……法人存続にこだわらず、経営資源引き継ぎやM&Aによる集約・生産性向上を視野に入れる

 

4.M&A・PMIへ深く関与する

……不適切な仲介から経営者を守り、統合後のシナジー創出まで長期的に伴走する

 

事業承継支援者は、「事業の存続・成長」と「経営者の生き方」の両面からアプローチできる専門家であるべきです。金融機関やM&A仲介業者にはできない、経営者に真に寄り添う「伴走支援」が、これからの事業承継支援者に求められている役割です。

 

読者の皆様におかれましては、ぜひ現場での支援活動を通じて、日本の中小企業の未来を切り拓いていただければ幸いです。

 

 

岸田 康雄

公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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中小企業の事業承継支援

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