歓迎したいのに…気が重くなる夏休み
「夏休みが近づくと眠れないの。今年も、あの2週間が来ると思うと……」
そう話すのは、夫の正一さん(仮名・69歳)と暮らす久美子さん(仮名・67歳)です。夫婦の年金収入は月約28万円、貯蓄は約3,400万円。住宅ローンを完済した戸建てで、普段は大きな不自由なく暮らしています。
長男一家は車で3時間ほどの場所に住んでおり、8歳と5歳の孫がいます。最初のころ、帰省は年に数回、2~3泊程度でした。久美子さんも布団を干し、孫の好物を用意して到着を待っていました。
状況が変わったのは3年前です。長男夫婦から「子どもたちに、おじいちゃんおばあちゃんとゆっくり過ごさせたいんだ」と頼まれ、8月に12泊するようになりました。長男は滞在中もリモートで仕事をし、妻も資格試験の勉強をするため、日中の世話は久美子さんが担います。
朝食を用意し、昼前には公園やプールへ連れて行き、帰宅後は洗濯。夕方になると、孫たちから別々の料理を求められます。
「お昼はそうめんでいいと長男には言われるけど、孫はそうめんを食べない。結局、おにぎりや唐揚げも作ることになる。夜は大人の分まで合わせて6人分でしょう。ずっと台所に立っている感じだった」
正一さんは買い出しや送迎を手伝いましたが、食事や寝具の準備は久美子さん任せでした。長男夫婦が仕事を終えた後も、「せっかく来たから」と外食や観光の予定が続きます。費用は多くの場合、正一さん夫妻が支払いました。
前年の滞在では、食費や外食代、レジャー費、孫への小遣いなどに約18万円を使いました。年金と貯蓄に余裕がないわけではありません。それでも、毎年当然のように負担する金額としては小さくありませんでした。
最もつらかったのは、滞在10日目の朝です。久美子さんは腰痛と寝不足で起き上がれず、朝食を作れませんでした。すると長男から、「昨日のうちに言ってくれれば、何か買っておいたのに」と言われたといいます。
責めるつもりのない言葉だったのかもしれません。しかし、その言葉を聞いた瞬間、自分が家族の世話役として扱われているような寂しさがこみ上げました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の人がいる世帯は2023年時点で全世帯の49.5%を占め、そのうち夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割です。親世代と子世代が別々に暮らすことが一般的になるなか、帰省時にどこまで支え合うのかは、家族であっても事前に確認する必要があります。
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