必要に応じて「飲みニケーション」も必要…金融機関にも仲介業にもできない、「事業承継支援者」に求められる“ソフトな伴走力”とは

必要に応じて「飲みニケーション」も必要…金融機関にも仲介業にもできない、「事業承継支援者」に求められる“ソフトな伴走力”とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢化や後継者不足を背景に、日本では「廃業」を選ぶ企業が増えています。「廃業」にはネガティブな印象を持つ人も多いと思いますが、必ずしも「悪」ではありません。事業承継の現場では、将来性や業界構造を踏まえ、あえて廃業を選ぶことが合理的な場合もあります。本稿では、「事業承継支援者」へ向けて、事業承継支援者に求められる役割を整理して解説します。

廃業は「悪」ではない…「事業承継支援者」が果たすべき役割

私は、平成28(2016)年の「事業承継ガイドライン」策定に関わり、以来、中小企業の存続と成長を支援する現場に立ち続けてきました。令和8年度(2026年度)を迎え、事業承継支援を取り巻く環境は大きく変化しています。そうしたなか、改めて我々「事業承継支援者」が果たすべき役割について考え、この記事を書きました。

 

我が国の中小企業では、経営者の高齢化と後継者不在による廃業の波が止まりません。しかし、廃業は必ずしも「悪」ではありません。重要なのは、その事業が持つ価値ある経営資源が失われることなく、次世代へ引き継がれるかどうかです。

 

事業承継は、単なる社長交代や株式の移転ではありません。それは、「事業の存続や成長を支えながら、経営者を交代させるプロセス」であり、事業性評価、経営者の生き方、承継手続き、そして生産性向上という4つの複雑な問題が絡み合う一大プロジェクトです。

 

本記事では、最新のガイドラインや実務潮流を踏まえ、なぜいま、私たち「事業承継支援者」が、単なる手続き代行者を超えて、経営者に深く寄り添う存在であるべきなのか、その理由と具体的な実践論を詳述します。

事業承継の支援は「前半戦」と「後半戦」に分かれる

事業承継支援の全体像を捉えるために、私が提唱しているのが「事業承継フレームワーク」です。これは、承継先(親族、従業員、第三者)と、解決すべき課題(事業性評価、企業経営、承継手続き)を、3×3のマトリックスで整理したものです。

 

このフレームワークのなかで、支援プロセスは明確に「前半戦」と「後半戦」に分かれます。ここに、我々支援者の真価が問われる領域があります。

 

前半戦で行うこと…1.事業承継の必要性について“気づき”を与える

多くの関係者は、税務申告や登記、契約書作成といった「後半戦(手続き)」に目を奪われがちです。しかし、事業承継が進まない原因の多くは、それ以前の段階にあります。

 

前半戦で行うべきことは、現経営者に「事業承継の必要性を認識してもらうこと」、すなわち“気づき”を与えることです。「社長を退任しよう」「後継者になろう」という心の状態をつくり出すことがゴールになります。

 

ここで必要となるのは、知的資産の把握や事業戦略の再構築といった「事業性評価」と、経営者自身の引退後の人生や、後継者の覚悟を問う「生き方の相談」です。

 

前半戦で行うこと…2.経営者の「心のスイッチ」を入れる

また、現経営者は、自社の将来に漠然とした不安を抱えていても、具体的になにが問題なのかを把握できていないケースが少なくありません。

 

そこで我々は、中小企業庁の「事業承継診断票」などを活用し、対話を通じて現状を可視化します。知的資産(顧客関係、技術・ノウハウ)が維持困難になっていないか、既存事業の収益性が低下していないかなどを客観的に指摘し、経営者の心を動かすのです。

 

前半戦をクリアし、経営者が決断さえすれば、後半戦の事務手続きは、それぞれの専門家に委ねることができます。つまり、事業承継の成否を握っているのは、前半戦において経営者の背中を押す我々支援者なのです。

 

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