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【裁決事例】満期直前の死亡で「相続税」と「贈与税」の二重課税に
相続人Aの父である被相続人は、以下の内容で生命保険契約を結びました。
・保険の種類……普通養老保険(満期保険と死亡保険が併存する保険)
・保険期間……平成16(2004)年6月22日~平成26(2014)年6月21日(10年間)
・契約者……被相続人(祖父)
・保険料の負担者……被相続人(祖父)、保険料は一時払い
・被保険者……被相続人の孫(相続人Aの子)3名
・満期保険金の受取人……被相続人(祖父)。保険金受取人が死亡した場合の指定はなく、保険約款では受取人が死亡し指定がない場合、満期保険金は被保険者が受取人となる。また、死亡保険金の受取人は示されていない。
・相続開始日……非公開(平成26(2014)年4月頃)
・相続税の申告日……平成27(2015)年2月26日
吉田課長「相続開始日は公開されていないんですね」
はい。この裁決事例は情報公開法9条1項に基づき開示されたもので、相続開始日は黒塗りになっています。ただし、相続税申告日から逆算すると平成26(2014)年4月頃と推定できます。
事実関係を改めて整理すると、下記の内容となります。
吉田課長「そもそも、祖父が年齢差の大きい孫を被保険者にして養老保険に加入するという例がなかなかないことだと思います。これは妥当な選択だったのでしょうか?」
養老保険は、被保険者(孫)が死亡した場合に支払われる死亡保険金と、満期を迎えた際に支払われる満期保険金が併存する仕組みです。この裁決事例では死亡保険金の受取人は示されていませんが、税負担を軽くする意図から祖父が受取人になっていた可能性が高いと考えられます。
この場合、祖父が保険料を負担し死亡保険金を受け取れば、祖父の一時所得として所得税が課税されます。所得税が課税される理由は、受け取った死亡保険金と支払った保険料の差額が、祖父の儲けになるからです。一時所得は、この差額から最大50万円を差し引いた残額の2分の1しか課税対象にならないので、税負担は少なくなります。
祖父と孫の年齢差を考えると、孫が祖父より先に死亡する可能性は極めて低く、死亡保険金を受け取る前提での契約としては合理性が低いものであったといえます。
吉田課長「この養老保険の保険期間は10年でしたよね」
はい。祖父が満期保険金を受け取るには、加入後10年間生存する必要がありました。満期保険金の受取人は祖父とされており、もし満期を迎えれば死亡保険金と同様に祖父の一時所得として課税されることになります。
吉田課長「祖父がこの養老保険に加入した目的はなんだったのでしょうか?」
推測ですが、祖父は「満期保険金」を受け取ることを目的としていたのではないかと思われます。なぜなら、実際には満期を迎える直前に祖父が死亡したことで、相続税と贈与税の負担が非常に大きくなってしまったからです。
もし投資目的で養老保険に加入していたのであれば、一時払い保険の利回りを検討することになります。しかし祖父は満期の約2ヵ月前に死亡したため、結果的に多額の相続税と贈与税が発生してしまいました。
吉田課長「なるほど。満期まであと少しというところで死亡してしまったのですね」
はい。その結果、満期保険金の受取人は孫3名となり、各人が約700万円を受け取りました。孫たちは保険料を負担していないため、この受取金には贈与税が課税されました。そして翌年、贈与税の申告を行い納税しています。
吉田課長「この保険契約では、贈与税の負担は避けられませんね」
ところが、それだけでは終わりませんでした。相続税の課税も重なり、さらなる悲劇が襲ったのです。
吉田課長「いったいなにが起こったのでしょうか?」
