保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】

保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

身近な人を亡くしたとき、思いがけず相続税がかかることがあります。「故人が持っていた財産」だけでなく、「みなし相続財産」として扱われる財産があるからです。今回はその「みなし相続財産」のなかでも「死亡退職金」に焦点をあて、相続税の対象になる条件や非課税になる特例、保険料の負担者と受取人によって変わる課税区分などについてみていきましょう。実際の裁決事例や法令にもとづき、多田雄司税理士が解説します。

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〈登場人物〉

吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。

「死亡退職金」の課税ルールとは?

今回は、「死亡退職金」について取り上げます。

 

吉田課長「まずは『みなし相続財産』がどういうものか、教えてください」

 

そもそも相続税とは、被相続人が亡くなった時点(相続開始時点)で所有していた財産に対して課税されるものです。

 

みなし相続財産とは、厳密には被相続人の財産ではないものの、実質的には被相続人の財産とみなされる財産のことをいいます。受取人が指定されており、遺産分割協議の対象にならない点が特徴です。

 

ただし、厳密には被相続人の財産ではないものの、実質的には被相続人の財産とみなされる「みなし相続財産」も、相続税の課税対象となります。

 

特徴としては、受取人があらかじめ指定されていて、遺産分割協議の対象にならない点が挙げられます。

 

具体的には、下記に示す6つがみなし相続財産に該当します。

 

1.みなし相続財産の定義(相続税法3条)

 

次の(1)~(6)の財産について、一定の条件を満たす場合には、実際には相続や遺贈によって取得したものではなくても、「相続または遺贈により取得した」とみなされ、相続税の対象となる。

 

(1) 死亡保険金

(2) 死亡退職金

(3) 生命保険契約に関する権利

(4) 定期金に関する権利

(5) 保証期間付定期金に関する権利

(6) 契約に基づかない定期金に関する権利

 

吉田課長「なるほど。では、『死亡退職金』とは具体的になにを指すのでしょうか?」

 

死亡退職金とは、下記の①②の要件を満たすものをいいます。

 

2.「死亡退職金」がみなし相続財産とされる場合(相続税法3条)

 

被相続人が死亡したことにより、相続人その他の者が以下の2つの要件を満たす死亡退職金の支給を受けた場合には、みなし相続財産として相続税の対象となる。

 

① 被相続人に本来支給されるはずだった退職手当金や功労金、その他これらに準ずる給与(退職手当金等)であること。

② 被相続人の死亡後3年以内に支給が確定していること。

 

吉田課長「①の『その他これらに準ずる給与』というのは、具体的にどういう意味でしょうか?」

 

国税庁の通達では、「名義のいかんにかかわらず、実質上被相続人の退職手当金等として支給される金品をいう」とされています(相続税法基本通達3-18)。つまり、名称が「功労金」や「慰労金」などとなっていても、実質的に退職手当金と同じ性質を持つものは含まれるということです。

 

実務では、この“実質的に退職手当金等に当たるかどうか”が問題になるケースが少なくありません。

 

吉田課長「なるほど。紛らわしいケースがあるんですね」

 

そうなんです。では、国税不服審判所(以下「審判所」)の実際の裁決事例(昭和55年10月4日)をもとに考えてみましょう。

 

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